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2006年09月03日
アーティスト・クロストーク 藤井雷×松井冬子
さわやかな風が立ちはじめた好天の9月3日(日)午後2時前、「日本×画展」の展示室前は、既に立錐の余地もないほどのお客様が集まり、熱気に満ちていました。この午後、最後のアーティスト・クロストークが開催されました。お待ちかねの皆様の前に、この日の主役、松井冬子さんと藤井雷さんを御案内すると、和装のあでやかな松井さんの姿に、場内から溜息(ためいき)が漏れたように思えました。
展示室前のクロストーク会場
トークはまず、お二人の制作過程の違いに関連して、下図の話から。
松井さんは、描こうとするイメージを明確にさせ、必要と考える写生を行うことから制作が始まるといいます。《世界中の子と友達になれる》(2004年)は樹海に泊まり込んでの写生、尾長鶏(おながどり)を描いた新作《引き起こされた不足あるいは過剰》のためには、やはり尾長鶏を飼う人を訪ねて泊まりがけで写生をするという厳格さです。それから取りかかる下図は推敲(すいこう)を重ねて仕上げる、「制作上最も重要なプロセス」と松井さん。大下図、本画へと展開して完成度を極めます。一方の藤井さんは、下図は一切描かないといいます。一発勝負、筆の走るままに描くのが藤井流、生な自分がその筆跡にさらけだされていくかのようです。
最初は、少々緊張していた様子のお二人でしたが、生活スタイルの違いに話題がおよんで、藤井さんが朝型、松井さんが夜中に集中して描く徹底した夜型と判ると、二人の好対照が会場の笑いを誘う和やかなムードになりました。
松井冬子さん
藤井雷さん
最後に会場から質問を受けました。「光についてどう思われますか」「死についてどう思われますか」など、抽象的な質問が多い印象でしたが、お二人は真剣に答えていました。
まだお二人の話を聞きたいという、なごりおしい雰囲気の中、予定時間を過ぎたところでトークは終了しました。引き続き、カフェ小倉山でサイン会が行われ、長い列を作ってサインを求める方々は自分の番になると、松井さん、藤井さんに直に接して言葉を交わし握手をし、贈り物を渡すなど、短い時間をそれぞれに、貴重な機会として充実させている様子がうかがえました。
本展のクロストークは、作品を前にしてアーティスト同士が語り合う会として企画されました。今回は、大変大勢の方にお集まりいただけて盛会でした。一方で、展示室前の会場は少々窮屈で、作品保全上の気遣いもありました。ご参加いただいた皆様に最後までご協力いただき感謝申し上げます。(横浜美術館学芸員 八柳サエ)
投稿者 gaten : 2006年09月03日 16:26