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この展覧会の横浜での会期も早いものであと2週間足らずとなりました。お陰様でこれまで3万人を越す方々にご来館をいただいております。まだご覧になっていない方は是非この機会をお見逃しなく。会期は6月25日(日)までです。
さて、このブログの最初に展示についてお話ししましたが、今日は<夢窓国師のおしえ>という作品についてお話しします。夢窓国師は鎌倉時代末から南北朝時代にかけて活動した禅の高僧です。若い頃から景勝の地を巡って自然の中で座禅修行につとめ、自然と人間の本性を究めて悟りを開いたと伝えられています。夢窓国師はまた、禅寺石庭の基礎を確立した人でもあり、西芳寺、天竜寺(いずれも京都)などの名刹の庭を手がけました。
ノグチによる<夢窓国師のおしえ>は、本展覧会場の第二章「神話・民族」の入り口近くに展示されています。ブロンズで鋳造された庭石を思わせるパーツ5つを床に並べる作品です。ひとつひとつのパーツは接地する部分が水平になっていて、石の塊をスパッと切ったような形をしています。実はこの作品、5つのパーツをどのように配置すべきか、ノグチによる指示がないのです。過去の展覧会カタログや書物に掲載されたこの作品の写真を見ると、それぞれちがった置き方で撮影されていますが、いずれも仕切りのない床に5つのパーツをひとつひとつ離して並べています。
ノグチは竜安寺や西芳寺など、禅寺の石庭に強い関心を寄せていました。彼は竜安寺(京都)の庭園について、限られたスペースに7つの岩が配置されているだけなのに、縁側に座って眺めていると、「庭が、広大な海原に島が点在する風景になったり、あなたが望むどんな無限の姿にもなる」とその魅力を語っています。石の巧みな配置によって、ほんの小さなスペースに無限の大きさが感じられる、ということでしょう。それは、石の大きさとその場のスペース(広さ)、周囲の壁やものとの関係、観る人の位置などを総合的に考慮してはじめて決定できるのではないでしょうか。
展示室の作品配置図面をひく段階で、ノグチの石庭についての言葉を思い出し、この作品のためにあえて部屋のコーナーを活かして3角形の白い床面を作ろうと思い立ちました。高さ5cmほどのごく低い台座として、通路とはちがう坪庭のようなイメージを作りたかったのです。5つのパーツの配置を考える際に、夢窓国師作と伝えられる石庭の写真をいくつか見てみました。そこで気がついたのは、石をひとつひとつ離す配置は部分的にしかみられず、むしろ複数の石を密にかためて、例えば遠景に山、手前に岸、ときに島のような大きなイメージをつくり、それらを川や海のような空間で隔てているということです。 とはいえ実際に作品を配置する段になってみると、なんだか自分の迷いがそのまま配置に反映されるようで、何度もやり直しをしました。なるほど<夢窓国師のおしえ>の「おしえLessons」は複数形なのだな、と納得した次第です。ノグチは作品配置まで創作行為と考えていたのではないかと以前に書きましたが、この作品の<おしえ>は、いわばDo It Yourself(自分でやりましょう)というコンセプトと深く関係していると思うのです。
彫刻は重みをどうやって支えるかが大切なポイントですが、作品の接地部分がどうなっているか、壁へのかけ方、台座への載せ方がどうなっているかを見るといろんなことが見えてきて面白いものです。そんなテーマのワークシートを展示室にご用意しています。是非トライしてみてください。(中村尚明)
投稿者 noguchi : 2006年06月13日 10:52