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【調査地:鎌倉[魯山人邸跡、円覚寺蔵六庵、神奈川県立近代美術館]】
『二つの自然』
最終回は、イサム・ノグチが間借りしていた北鎌倉の魯山人邸跡、父・米二郎が執筆のために度々滞在していた円覚寺、ノグチの個展が開催された神奈川県立近代美術館を訪問しました。
特に印象が強かった魯山人邸跡は、大船駅からバスに乗り、バス停からも15分ほど歩いた山間にありました。かつて広大な土地を擁した魯山人邸跡は、今は一部を残すだけで、小学校、マンション、住宅が立ち並ぶ場所となっていました。ノグチ(と当時妻であった山口淑子)が借りていた家は残っていませんでしたが、魯山人邸の萱葺きの門がしっとりと苔で覆われ、かつて自然を愛でつつ制作に打ち込んだ時間が肌を通して伝わってきました。
当時、この山間の入口には切通しがあり、通り抜けた先に田んぼと緑が広がる、まるで桃源郷の様な土地だったそうです。街まで容易には出掛けることの出来ないこの桃源郷で、自分のアイデンティティーについて外野から突かれず、父の様に慕った魯山人と共に制作に打ち込む時間は彼の後半生に大きな影響を与えたことでしょう。
少年期の茅ヶ崎で感じた大らかな自然と、鎌倉の奥地で田舎風情ながらも洗練された自然。彼の作品が自然でありながら洗練さを感じるのは、これらの土地から得た記憶が紡ぎだしているのだと思いました。響き渡る鳥たちの声と雨にぬれた草木が放つ青い香りを吸い込みながら。
(横浜美術館市民ボランティア 上野志乃)
投稿者 noguchi : 2006年06月03日 17:43