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【調査地:鎌倉[魯山人邸跡、円覚寺蔵六庵、神奈川県立近代美術館]】
1950年代初頭、イサム・ノグチが魯山人に招かれて鎌倉の地に住んでいた頃は、彼の人生の中でも創作活動が最も盛んな時期であったという。当時の妻山口淑子との華やかな私生活もさることながら、鎌倉の地がもつ豊かな文化の香りもその背景にはあったのだろう。決して交通の便がよいとはいえない緑深い山奥には、静かな時間が流れている。人里を離れて、切り通しで隔てられた地は、落ち着いて制作に取り組むのには最適だったのかもしれない。雨がしとしとと降る北鎌倉の山崎の地に立っていると、魯山人がイサム夫妻を食事に招待するときに鳴らしたという鐘の音が、遠くから本当に聞こえてきそうな錯覚すら覚えた。
鎌倉の古都としての魅力は、自然と私たちに日本人であることを意識させる。イサムが小さい頃、父が円覚寺に住んでいたときに訪れたのかもしれない。だとすれば、一度は離れた地、鎌倉。アメリカ生活を経験した後、再び日本に戻ってきたとき、イサム・ノグチの目に、鎌倉の町はどのように映ったであろうか。きっと長い異国の地での生活により培われた「外」からの視点を持った時、日本の古都独自の魅力はことさら新鮮に映ったのではないかと思う。神奈川県立近代美術館にある「こけし」に、そんな日本人の遺伝子を受け継いだ芸術家としての自覚を感じずにはいられなかった。
今回で、全三回のイサム・ノグチ探検隊!の活動が全て終了したことになる。こどもの国、藤沢、茅ヶ崎、そして鎌倉。彼のゆかりの地を訪れ、人生の足取りを少しではあるが辿ってみることで、今まで以上にイサム・ノグチの作品が身近に感じられるようになったことは言うまでもない。
(横浜美術館市民ボランティア 匿名希望)
投稿者 noguchi : 2006年06月03日 17:40