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【調査地:鎌倉[魯山人邸跡、円覚寺蔵六庵、神奈川県立近代美術館]】
今回は雨の鎌倉を歩きました。
1950年代に、イサム・ノグチが山口淑子と暮らした北大路魯山人邸のはなれは、今は魯山人邸共々残っていませんが、写真で見ると谷合の土地に山を背にした屋敷とその前に広がる田んぼといったこのあたりに典型的な農家の配置です。敷地内に移築した農家に住んだそうですから、落ち着いた田園生活が満喫できたことでしょう。
途中の道端に、あたりの住宅にはそぐわない庚申塔があったことからも、高度成長期以前は中世からの静かな田舎と呼ばれるような土地柄だったと思われます。そんな土地で土を捏ねて暮らす。おまけに新婚さんですから、絵に描いたような幸せな穏やかな日々を過ごしていたことが想像されます。もちろん、作品に対する芸術的な悩みはあったかもしれませんが、現地に立って思ったのは、写真に残るアトリエのことです。背後の山の崖の法面をそのまま壁にしたアトリエがとても印象に残りました。写真で見ただけですが、崖の地層がそのまま壁や台に見えるので、本当に崖の法面そのままのようです。切通しだった道を歩いた限りでは、現地の土はそんなに明るい色ではなかったので、採光が悪いと暗い雰囲気のアトリエになったのではないでしょうか。アトリエの反対側は、対照的に明るく開放された縁台のようですから、雨降りのせいで暗い土に見えたのかもしれませんが、崖が剥出しで地層も見える暗い壁は気持ちを引きしめる効果があったのかもしれません。
イサム・ノグチにとって最も幸せだったと思われる時期を過ごした場所は、穏やかな土地柄が偲ばれ、ゆかりの地を歩くこちらにも、その幸せが想像され、ほんわかと暖かい気持ちになれました。
また、最後に見た神奈川県立近代美術館にあるその時期の作品も、その幸せさを思わせる柔らかな色のみかげ石製の男の子と女の子のペアでした。
(横浜美術館市民ボランティア 片平明子)
投稿者 noguchi : 2006年06月03日 17:38