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『体感する:イサム・ノグチの自然』
横浜にある「こどもの国」の一部がイサム・ノグチの構想によるものだとご存知でしたか?
私は『初耳』でした。美術が好きで、幼少から横浜で育ったのに・・と軽いショックを受けつつ、「こどもの国」へ向かいました。
現存するノグチの作品は少ないと聞いていましたが、緑が濃い一角にあるノグチのプレイグラウンドは、それぞれの作品に存在感があり、「緑の中の美術館」の様でした(もちろん、ノグチの構想はあくまでも「子供の視線」が中心で、美術館という枠を超えたものを目指していたのですが)。
なかでも、現在は倉庫として使用されている旧『公衆トイレ』は、地中に埋めた2対の壷を使ったユニークな作品です。白一色の空間は、壷内部の柔らかな曲線と天井にある丸い窓(写真:天井)からの自然光で、以前トイレであったことを忘れてしまうほど、清廉かつ暖かさがあり、しばらく言葉を失いました。2つの壷を合わせ、中心に柱を使わず、壁と床も垂直に交差していない内部は、一見素朴な印象を受けますが、じつは「構造的によく計算されている」(学芸員・中村さん)そうです。まさに、ノグチが目指した‘熟考された上で芸術として慎重にされる自然’が体感できる作品と言えるでしょう。
同じく自然を感じさせる作品に、プレイグラウンドの入り口にどっしりと構えている『児童館の門』(写真:門)があります。遺跡の様な重量感と表面の緩やかな曲線、そして入り口側の少し左にずれた半円形は、門の先に広がる「別の世界」へと誘うような吸引力をもつ不思議な存在感があります。ノグチの言う「新しい時代(宇宙)と古い時代(原始)が融合した世界」と現実世界が切り替わる“境界”の様な存在なのかもしれません。
現存する作品たちは、歳月を経て周りの緑や土に馴染むことで、新たな芸術的価値を生み出しており、サイトスペシフィックともランドアートとも異なる「子供に向けた」作品としても、美術史上で再考する必要があるのかもしれません。
軽いショックを受けての訪問でしたが、優れた作品と豊かな緑に触れることで、すっかり気持ちが切り替わりました。帰り道、「こういう体験があるから、美術って面白いんだよな。」と独り言を言いながら・・・。
(横浜美術館市民ボランティア 上野志乃)
旧「公衆トイレ」の天窓
「児童館の門」
投稿者 noguchi : 2006年05月19日 20:20