

去る5月8日から21日までシネマ ジャック&ベティ(横浜市中区若葉町)にて、モンゴルをテーマにした映画「チャンドマニ~モンゴル ホーミーの源流へ~」が公開された。この作品については、企画段階からアーツコミッション・ヨコハマ(以下、ACY)も相談をうけ、製作に協力してくれそうな団体を紹介するなど映画化の実現にむけて関わった。その取り組みもふくめて、映画の完成から横浜での上映に至るまでの経緯を紹介したい。
| 会期: | 2010年5月8日(土)~5月21日(金) |
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| 会場: | 横浜シネマ・ジャック&ベティ 本誌vol.5 アートcafeめぐり |
| 詳細: |
ストーリー
アルタイ山脈周辺部に伝わる喉歌と呼ばれる歌唱法がある。一人の歌手が、口笛のような高音と唸るような低音を同時に発声する。この歌は、ホーミーと呼ばれている。
この映画は、ホーミーの故郷「チャンドマニ村」を目指す二人の青年が、モンゴル人である自分自身と向き合う旅を描いたドキュメンタリードラマだ。馬頭琴、長唄などの伝統音楽にのせて、現在のモンゴルに生きる人々を静かに映し出した作品である。風の中に溶けこんでいくようなホーミー、昔ながらの芸能など、心に響く音の数々が散りばめられている。
監督とACYの出会い
亀井監督とACYの出会いは2007年。当時、監督は関西在住であったが、偶然にも横浜を訪問。中華街で食事中に、知人からACYというアーティスト支援の仕組みを聞き、ACYの窓口を訪ねるに至る。
ACYは、横浜市が推進する”芸術文化のもつ創造性を活かした街づくり”「クリエイティブシティ・ヨコハマ」の一環として、横浜に集うアーティスト、クリエイターをはじめとする様々な”創造の担い手”たちの活動支援を目的とする中間支援事業で、横浜市と公益財団法人横浜市芸術文化振興財団(以下、財団)が共同で行なっている。
監督がACYでプレゼンテーションをおこなったのは、撮影の半分をすでに終えていたところで、ACYの担当者は、監督の「クリエイティブシティ・ヨコハマ」への寄与は未知数ながらも、映像文化都市を掲げる横浜であれば「横浜から国内外へ発信していくソフトができるかもしれない」という期待感を持った。
ACYの支援
監督の希望は、人的支援、製作費支援、配給会社の紹介だった。ACYが支援の道をさぐる中で、偶然にも財団職員の一人が、かつてモンゴルで仕事をしていたこともあり、、この職員を通じてモンゴル関係者に協力を依頼した。
多くの関係者が、日本とモンゴルの友好親善のために協力を惜しまなかった。駐日モンゴル国大使館、在モンゴル日本大使館、社団法人日本モンゴル協会が後援に入った。笹川平和財団はモンゴルの国会議員団が訪日した際のレセプションに監督を招待してくれた。専門家を始め多くの方が様々なアドバイスをした。映画をつくりたいという想いで、身一つで挑んでいた監督にとって、このようなネットワークを得たことは、製作をすすめる大きな原動力になったようである。製作費については、監督がACYの助成金に応募した(残念ながら採択されなかった)。配給会社は、監督とACYがそれぞれ探したものの見つからず、ACYの協力はここで一旦終了。製作費と配給の目処がたたないままモンゴルでの2回目の撮影が始まった。
映画の完成から公開まで
映画は2008年の暮れに完成。製作費は監督の自己資金を充てた。コンテストに出品するも、良い結果は得られず、配給会社も依然見つからない。
監督は、渋谷のミニシアター「アップリンク」への自主配給を決めた。配給会社を通さず、製作者が映画館と直接交渉して配給を行う方法である。
映画の完成から1年が経とうとしていた。無名の新人監督の試写会のために60席ほどの小さな会場が用意された。しかし、インターネットで予告編を見たファンなどで会場は埋めつくされ、廊下には、会場に入りきれない人が溢れた。舞台挨拶は熱気に包まれていた。
映画の魅力
季節は冬。気温は氷点下20度を下回る。主人公はバスで旅立つ。監督が、バスに同乗して撮り続けた映像からは、旅の魅力が余すことなく伝えられている。ドラマの間には、数々の演奏シーンがちりばめられている。遊牧民の生活と自然の中で育まれた音楽だ。
映画はドキュメンタリードラマという手法で撮影されており、プロの役者は一人もいない。出演者が自分自身を演じることを前提にストーリーが作られている。虚構と現実の境界線はあいまいだ。演技でありながら彼らの日常の姿が垣間見える。
その後
映画は「アップリンク」で約1ヶ月間上映された。全国紙に監督のインタビュー記事が掲載されるなど好調なスタートを切った。横浜での上映はシネマ ジャック&ベティ(横浜市中区若葉町)が名乗り出た。監督がACYを訪問してから2年が経過していた。
その後を紹介する。山梨県立博物館で開催された「チンギスハーンとモンゴルの至宝展」のイベントとして1日限りの上映会が行われ、500名以上の来場者が集まった。監督の地元、関西での公開も予定されているほか、アメリカのミニシアターからも上映のオファーがあるとのこと。夏にはチャンドマニ村での上映会が計画されている。監督は現在、次回作のため、メキシコに滞在している。