Yokohama Creative People

横浜でクリエイティブな活動をする方々を、インタビューで紹介。クリエイションの現場の生の声をお届けします。

第2回:住友文彦さん(ヨコハマ国際映像祭2009ディレクター)

第2回目は、10月31日から始まる、映画祭でも現代美術展でもない、新しい国際映像フェスティバル「ヨコハマ国際映像祭2009」のディレクター住友文彦さんに、「ヨコハマ国際映像祭2009」の全貌、そして200%満喫する方法などを伺いました。

「映画祭」でも「現代美術展」でもない「国際映像祭」


Q. 「ヨコハマ国際映像祭2009」は、「映画祭」でも「現代美術展」でもない新しい国際的な映像フェスティバルと銘打っていますが、どんな特徴のあるフェスティバルですか?
 「映画祭」や「現代美術展」というのは「ジャンル」になると思うのですが、「映像」といった場合はジャンルではなく、「表現の道具」、「メディア」と捉えて、この道具を使って音楽をやっている人、現代美術の人、映画の人、さまざまな人たちが一堂に会するというのがこのフェスティバルの特徴ですね。
 映画もあります、アニメもあります。意識していろんなジャンルの作品を集め、映像を表現道具としている人々に集まってもらいました。映像を使っている作家って、ミュージシャンや、映画監督や現代美術作家、もういろいろなんですよね。
 違うジャンルを同じ場に並べることはとても意味があると思っています。アニメやっている人、映画やっている人の作品を一緒に比べてみて、ああだこうだ言ってみたいけど、現実は、やっぱり、ジャンル毎、業界毎に固まってしまって交流する機会はほとんどないと思うんですね。それって残念だなあと感じていて、「並ぶことに意味がある」と言ってきました。だから、関係者、観客の交じり合いを狙っています。
Q. コンセプトは「Deep Images」とのことですが。
 それは、映像の「奥行き」とか「深さ」という意味です。普通、例えばテレビとか映画の「フレームの中で何が起きているか」、を見ているわけですが、実際にはフレームに切り取られてしまったものとの関係というのが、すごく重要だしおもしろいところだと思うんです。でも、それは虚に隠されているわけですよね、だから映像は表層的メディアといわれる。でも、今回の作家たちは「フレームの外側と映像の関係」をすごく意識している。「フレームの外」というのは、具体的には「社会の問題」とか、映像が自分の身体にあたる光のことだとか、あとは空間的な展示をする作家だったりとか。フレームの中でなんか面白いことをやろうという人たちが、映像作家のほとんどだと思うんですが、ヨコハマ国際映像祭では、そうじゃない人たちをとりあげているんです。つまり映画、映像、アニメというジャンルで、既存のメディアを使いつつも、既存の表現形態を超えようとしているようなタイプの人たちにフォーカスしています。
ヨコハマ国際映像祭予告ムービー
 映像ってなんだろう?と考えてもらえるようなものにしたい。「映像みて、楽しかった」で終わるのではなくて、映像というメディアが社会の中でどのように使われているのか、ということに意識的な人の作品をみると、「あ、テレビの見方が変わるかも」ってそういう風になるといいなと。
 あと、もう一つの特徴、今、確かにいろんな人が「映像」を使っています。「映像」を使うことのハードルが低くなっている。実はアーティストじゃない人たちがどんどん映像を作っているということなんですよね。
 映像って、今までは社会のほんの一握りの人しかつくってなかったんですよ。テレビ局とか、映画会社の方とかに限られていて、世界の人口からいえば、ほんの少しの人が一方的に発信していたわけですよね。それが、そうじゃなくなって、YOU TUBEを見て、「あ、誰でも映像を作れるんだ」と気づいた、今までの大多数だった受信側の人たちが発信を始めると思うんですね。そうすると、たぶん、情報の流通の仕方ってすごく変わるはずだと思うんですよ。
 これはかつてインターネットができて情報流通が大きく変わったのと同じように、映像を用いたコミュニケーションが、一方通行のマスメディア的な発信となることの可能性に対して、この映像祭は注目したいと考えていて、新港ピア会場では、アーティストではない人たちが自分たちで映像をつくって発信する現場を作ろうと思っているんですね。
そのこと自体が、同時代性を感じてもらえることだと思うので、映像祭の大きな特徴にしたいと考えています。

「CREAM コンペティション」

Q. 「CREAM」のコンペティションは、第1回目だというのに世界42カ国992件の応募があったと聞いています。とても多いと思いますが?
 分野も区切らなかったし、オールジャンルという募集だったので、予想は3分の1の300作品程度だと思っていました。ところが、ふたを開けてみると、映画やアニメーションなどの既存のジャンルの作品もありましたが、そのどこにも入らないタイプの作品が結構ありました。そういう人たちにとってみると、作っても既存のジャンルにカテゴライズできないために今まで出す機会がなかった!そういう作品が多く寄せられたのだと思います。
 だから審査員も完全みんな違うバックグラウンドで、非常に多彩(笑)。そのがちんこ勝負の審査のやりとりも面白かったですね。応募は世界各国からでしたが、若手の、特にアジアと日本の若手作家が、評価が高かったです。
Q.告知はどのようにしたのですか?
 メールや、韓国や中国などで自分自身が講演したときにPR、知り合いづての口コミ、ウェブなどです。
Q.既存のジャンルに属さないというと、たとえばどんな作品ですか?

CREAMコンペティション「CREAM賞」受賞作品 松島俊介《VOICE-PORTRAIT ~self-introduction~》より
 今回、大賞をとった作品がまさにそうですね。松島俊介君というIAMAS(情報科学芸術大学院大学)の学生です。ウェブを使っている作品ですが、タンブラーというウェブサービスで、自分がつくった自己紹介の映像というのを自分の著作権なんか関係なく、好きに使ってください、という試みなんですね。
作品としては、ポートレートという形になりますが、ポートレートというジャンル自体は、美術の中で、もう昔からあるんですね。でも、今回の受賞作は美術かっていうと、そもそもこれは作品か、というところで、美術界では認められないと思います。というのは、「もういろんなところにディストリビューションしていいです」なんてことを言っちゃってるから(笑)。
 ウェブ上にあがっている映像を借りてきて、これに自分のポートレートを重ねる作品です。映画でもないし、メディアアート-メディアスペシフィシティというハードなものでもなく、もっと気軽な創造意欲なんですね。自分の使っている身近なツールで、気軽に表現してみました、という。だから、メディアアートという分野でも評価されにくい。
 だけども、多彩な審査員に見せると、人の身体をある種パフォーマティブなものとして使っている作品としておもしろいと評価する人もいるのです。映画の初期に自分を写してみようと考えた人たちのことも想像できる、映像に対する人類の最初の欲求を思い起こすこともできる、映画的なものである、と。一方でタンブラーという新しいウェブサイトの技術を使っていて、いろんな方向から、違うジャンルから評価できる「接点」のようなところに彼の作品があって。最初は大賞になるかわからなかったけど、あれよあれよという間にちゃんと評価を獲得していったというのは、やはりいろんなジャンルの「接点」だったからだと思います。
 あとは受賞作ではありませんが、香港の19歳の子のドキュメンタリー作品があります。友達と会っているときにカメラを持ち続けて、自分の日常を撮り続けているという作品です。
この作品を見ていると、カメラが本人の体の一部と化していて、友達もカメラのことなんか全然意識していなくて、ティーンエイジャーの日常をすごく捉えていて、ドキュメンタリーっぽい一方で、なんだか軽くサラッとしていてPVを見ているような印象もある作品。社会的な問題意識で作られているドキュメンタリーものではないので、とても新しい感覚の作品ですね。
君たちの会話から、何を読み取ればいいの?という感じなんだけど、でもそれが逆に瑞々しさを感じさせる。編集はされていますが、19歳ならではの感覚で切り取られている。シャム・カーキという作家で、映像祭で上映もされます。

横浜で「映像祭」を行う意味

Q. 横浜で「映像祭」を開催することについては、どのように思っていらっしゃいますか?
 横浜という街自体が、市の政策として映像文化都市を標榜しているだけあって、映像にかかわる団体が多くあります。「野毛Hana*Hana」さんなどです。映像祭では「AMクルーズ」という、横浜で映像に関わっている人とのトークを7回行ってきましたが、西洋文化が最初に到来して、映像が入ってきた街である横浜でこそ可能だった取り組みだと思います。もう一つ、東京藝術大学映像研究科の存在も大きいですね。学生や教授の皆さんと企画の段階からいろいろ相談しながら進めることができました。
 映画祭やりましょう、とかトリエンナーレやりましょう、というのはあっても、「映像祭」という発想自体が、横浜でしか生まれ得ないものだという気がしています。
先ほどもお話しましたが、映像を使った作家は今、圧倒的に増えている。この10年、爆発的に増えています。そんなタイミングで、2009年にこういうフェスティバルが起こるというのは起こるべくして起きたところもあるし、行政がやるものとしては野心的だなと思うんです。既存のジャンルに乗っかるわけでもないし、どこかでこのようなフェスティバルをやっているわけでもないですよね。
そういう新しい試みをやろうとしていることには、結構感心してます。
Q. 東京藝術大学映像研究科の学生だけではなく、多くの若い方々がインターンシップなどで関わっているそうですね。
 インターンの人たちは、自分の仕事としてこの経験を将来に活かしたいと思っている人たちですね。彼らにとっては、経験の有無が、今後のキャリアに進める大きなポイント。それだけに、ここで経験の場を提供したいと思っています。
 短期間でガッとやるのは勉強になります。美術館で何か企画展を一つやるよりも、これだけたくさんの企画があるので、関わる人も多く経験を積みやすいと思います。だからこそ、いろんな人たちに声を掛けて集まってもらいました。学生ばかりではなく、いろんな人がいます。作家志望の方もいるんですよ。別にみんなが企画したり、キュレーターになる必要はなく、いろんな仕事があるはずなのに、あまり知られていない。いろんな役割、志望で関わってくれればいいと思っています。
Q. 「ヨコハマ国際映像祭」が新しいコミュニケーションを開拓するきっかけになるというのは?
 横浜はアートスペースをたくさん持っている、ということが「多会場」という企画につながっています。これまでの横浜の取り組みの成果が、インフラとして繋がっているということですよね。

 横浜はもともと映画の街です。これが今の政策「映像文化都市」の発想の原点。映画監督が絵になる場所として横浜を選んでいて、いろいろな映画に登場しているということがあると思うので、東横線を降りて会場に来て帰るだけでは、横浜って街自体をみることがないじゃないですか。でも、「野毛山に作品があります」とか、「黄金町にも作品があります」っていうと、当然街中を歩いていくことになるので、かつて映画の街とよばれた街が今どうなっているか、を体感してもらえる。例えば、黄金町で展示する作家は、黒澤明が黄金町で昔撮った「天国と地獄」のリメイクをやっている。それで、かつての映画の街としての歴史に触れてもらえることになる。「映像」自体は街にでることは技術的に難しいもので制約を感じつつも、できるだけ挑戦してみたのです。
 野毛山動物園は、映像祭のサテライト会場として本展に先駆けて開催しています。3組の作家が展示されています。ナイト野毛山という、夏限定の夜間に開園するという動物園の試みに合わせて会期設定を設定したため8月からやっていますが、映像祭本展会期中もやっています。

「ヨコハマ国際映像祭」攻略法

Q. 各会場の特徴とみどころを教えてください。
 会場は、新港ピア、BankART Studio NYK、東京藝術大学馬車道校舎、野毛山動物園、黄金町バザールの5ヵ所です。
 まずBankART Studio NYKは、空間的なインスタレーションの展示です。ここが一番、テレビとか映画のフレームの中で映像表現するのとは違う試みをしている人たちの作品を見られる会場です。ここは、最先端の表現を集めています。
 新港ピアは、ちょっと違う特徴になっていて、最初の部屋にはインターネットなどのウェブサービスをつかった新しい表現をしている人たちの作品が並んでいます。2つ目の部屋がイベントスペースですね。ここは音楽とか、VJとか、昔の神奈川ニュースを流したりしています。最後の部屋が、自分たちでつくるという「ラボスペース」。自分たちで放送局とかワークショップとか、映像をそこから実際に生み出そうとしている人たちの活動がみられるスペースです。全く違う特徴をもった二つの会場です。一方は展示を見てほしいし、もう一方は活動が実際に行なわれる場所として構成されています。
 コース的には、どちらからでもいいんですが、駅から近いし(笑)、BankART Studio NYK、で国内外のアーティストの新しい作品に触れてもらい、新港ピアで、「自分でもできるんだ!」って思ってほしい。そして、カフェで感想を語り合って、サテライト会場に繰り出してほしい。
Q. BankART NYKで、思い切りいい作品をみて、その気になって新港ピアに行き、自分もやるぜ!という感じ?
 Yes, we can!のノリですよ(笑)。で、来年ぜひコンペに応募してもらう(笑)

Q.新港ピアには、これまで映像なんか全く作ったことがない人でも、気軽に、手ぶらで活動を始められるような場所がありますか?
 あります。サポータークルーという人たちが、今年の4月からZAIMに部屋をもっていて、活動しているんですよ。これまで実際にカメラを手にしたこともなかったような学生さんや、おじさんおばさんが自分たちで撮影して、「チャンネルCREAM」という番組を制作するという活動を既に始めています。だから、これに参加してもらうこともできるし、もっと気軽に機材をつかって撮影してみる、というワークショップコーナーもあるので、そこで体験もできます。

Q.カップルや家族で気軽に楽しめるコースもありますか?
 気軽なコースと、ある程度がっちり体験できるコースがあります。ちょっと踏み込んで、ワークショップとかレクチャーなどもあります。

 映像ってなんだろう、って言葉で話してもあまり意味はなくて、話だけではピンとこない。でも、撮ってみるとすぐわかるんですよ。自分が撮ってみると、「これを撮影するんだな」じゃなくて、撮影って「何かを除外するんだな」というのがすぐわかる。編集ってすごい膨大な素材があって、その中から選ぶ作業ですよね。でもできたものだけ見てるとそれが全てに見えちゃうんですよね。でも、自分でつくると基本的には排除される部分がたくさんあって、その中でニュースというものが作られてるんだなと思うと、見方が変わるはずだと思います。だからぜひ作ってもらいたいと思います。

Q.デジカメや家庭用ビデオが流通していて、家庭で編集することも増えてきているから、そういう意味で、すごく画像は親しみやすいメディアですね。
 そう思います。彫刻とかよりも、実は映像のほうが今は身近じゃないですか、絶対。自分たちのやっていることの延長で見られると思います。一般の人たちに身近なものを扱っているという意味では、相当馴染みのあるもののはずだと思う。

Q.例えば現代美術の展示などで、映像作品は観るのに時間がかかりますよね。全部観るのは大変だと思ってしまうこともありますが、映像祭を楽しむコツはなんでしょう?
 映画を観るのは1800円、で、約2時間ですよね。この映像祭では、見やすいように短い作品を多くしています。東京藝術大学の校舎を会場とする上映プログラムでは、お目当ての作品が何時からやるかしっかりチェックすることが基本です(笑)。1作2回しか上映されませんから。

 あとは、イベントも週末ごとにあります。11月中旬には、期間限定で、メガスターというプラネタリウムもやります。谷川俊太郎さんが詩をつける新しいヴァージョンです。これは混むと思いますよ。

 だから、2回くらい来たほうがいいと思います(笑)。
で、パスポート券というのがあるんです(笑)。2500円で、会期中は何度でも入場可能でイベントも参加できるので、映画1本で1800円と考えたらとってもお得!

 上映プログラムの際には監督のトークもあります。

 あと、海から船で、グラフィティ・リサーチ・ラボというグループの、壁に落書きをするイベントを船から観ましょう、というのも見所の一つです。パフォーマンスやライブなどでインタラクティブな体験をする企画もあります。

 キャッチフレーズは、 見る・語る・触れる・そして作る!

 観たいプログラムを事前にチェックして来るのが、まず基本!
二つ目の見方としてパスポート券を購入する(笑)。それでイベント見まくるのがいいと思います(笑)。映像祭を自分のシアターにしてしまう。

楽しみ方にしても、フラッと出掛けて行って思わぬものに出会う楽しみ方と、事前にリサーチしてじっくり取り組む、と、いろんな楽しみ方ができそうですね。それに相当ふだん見られないような体験ができそうです。
10月31日から11月29日は、毎週横浜に来て楽しもう!

関連サイト

ヨコハマ国際映像祭2009
http://ifamy.jp/

プロフィール

住友文彦[すみとも ふみひこ]

1971年東京生まれ。「ヨコハマ国際映像祭2009」ディレクター。特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ副理事。

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