


ファーイースト・コンテンポラリーズ(以降FECとする)の活動は全てプロジェクトベースで遂行し、それらのケースを丁寧に積み重ねていくことを常に意識しています。一つ一つをプロジェクトと意識して仕事をすると、その成果を客観的に捉えられるだけでなく、プロジェクトに関わる人もより気楽に、そしてより真剣に取り組むことができる、と考えているからです。
「全てはプロジェクト」という意識を持てば、限られた時間の中で最大の成果を生むよう努力をするし、変な理由や都合によって長く拘束されるという心配もない、一人ひとりの能力や専門知識も生かすことができる、そして何よりプロジェクトに関わった全てのメンバーがより良く、そして充実した経験を共有できます。
以上のような姿勢で取り組んだFECの過去のプロジェクトを、今回と次回の2回に渡り紹介していきたいと思います。今回は主に横浜でのプロジェクトについて、そして次回は東アジアでのプロジェクトについて書いていきたいと思います。


FECの中心となっている事業の一つがこの横浜市・北京市芸術交流事業です。FECとしては2007年度より企画運営を担当している事業で、年間一組のアーティストを北京市から招聘、横浜に約1ヶ月から3ヶ月の間滞在いただき、FECはその間の滞在、作品制作の支援を行っています。
担当初年度は、遅鵬氏が来日することになりました。遅鵬は、1981年山東省煙台生まれ、2005年中央美術学院デジタルメディア科卒業の後、北京を拠点に活動しています。非現実的な世界を未来の現実としてコンピューター上で高解像度のデジタル画像を作り上げ、写真メディアとして作品に落とし込む作家です。
横浜での滞在期間中は、横浜周辺のみならず東京や京都などにも足を伸ばして撮影を行い、六本木、渋谷、京都、そして横浜を舞台に計4つの作品を制作しました。
日本での滞在後、いったん日本で撮影した作品を北京に持ち帰り、自分のスタジオで丁寧に手を加えた後に作品化したいという作家の姿勢を尊重し、横浜滞在中には展覧会を開催することを強要せず、作家がどのような姿勢で日本に滞在し、作品を制作してきたかを話す機会としてオープンスタジオのみを開催しました。そして、滞在から約1年後に東京・青山のディーゼルギャラリーでの展覧会の機会を設け、その発表の場としました。


そして2年目は、北京在住のアーティスト夫妻、王衛氏と何頴宜氏が来日しました。サイトスペシフィックな作品を制作する両氏は、ZAIMフェスタの時期に合わせて新作、旧作を含んだ展覧会を開催した他、滞在期間中には横浜で活動する作家等と積極的にコラボレーションを行い、また滞在の最後には滞在した馬車道スタジオを開放し、オープンアパートメント・イベントを開催しました。
各作家とも、横浜滞在中はZAIMの1室を拠点に作品制作を行いましたが、それぞれのアーティストのスタイルや要求に合わせ、横浜の環境や機会を踏まえながら、アーティストと共にプログラムを柔軟に構成し、アーティストの立場に立って、横浜での滞在を充実したものにすべく、そして意義のある作品を制作してもらうべく、FECは活動しています。


FECはレジデンスプログラムの運営だけではなく、アーティストと共に企画し作り上げる、参加/流動型展覧会を横浜で開催してきました。
「Discharge Mode to Order」は、もの、意味、概念、メディアを解体しながら作品/商品を創り上げる、FINAL HOMEのファッションデザイナーとして活躍する津村耕祐氏と現代アーティストの金氏徹平氏との二人展として、横浜の本町実験ギャラリーにて開催しました。
過去の作品を「放電(Discharge)」し、お互いのクリエイティビティを開放するところから展覧会をスタートさせ、ブレインストーミングのようなやりとり(ハプニングプロジェクト)を重ねながらのコラボレーションを通じ、それぞれの名前の頭文字をとった作品《KTTK》を作り上げました。


このコラボレーションワーク《KTTK》は、展覧会期間中、常に変化していく作品で、展覧会の中に参加/流動という概念を取り入れることで、期間中何度も足を運んでくださるお客さんもたくさんいました。そして、最終日には、トークイベントを開催し、二人のやり取りを振り返る機会を設けました。

また、本展覧会とほぼ同時期に横浜美術館前の住宅展示場、横浜ホームコレクションで開催されたアートフェアでは、AITの堀内奈穂子氏と協業し、「Our Sweet dream house / 理想の夢の家」をテーマに、ささやかな日常に潜むスペシャルな出来事をキーワードとして若いアジアの10組のアーティスト(日本、中国、韓国、台湾、オーストリア)の作品を紹介しました。
開催期間中、参加アーティストにパフォーマンスやワークショップなどを企画、開催いただくことで、よりインタラクティブ性のある展示を目指しました。
そして本展覧会の企画と平行し、現代美術を収集するということを多角的な側面で紹介するためのトークイベントのナビゲーターを担当、「現代アートと出会う」をコレクターの宮津大輔氏と、「現代アートを買う」を東京画廊+BTAPの山本豊津氏と、「現代アートと住まう」をみかんぐみの曽我部昌史氏と共にお話させていただきました。
以上のようなレジデンスプログラムやプロジェクト型の小規模な展覧会を担当、開催するのと並行し、美術館やコマーシャルギャラリーでは引き受けることが難しい、より作家側のスタンスに立って、その活動を長期的に一緒に考えていけるような、現代美術における新しい仕組みが考えられないかと常に考えています。
とかく閉鎖的な日本の美術業界に対して、少しでもアーティストにとって活動しやすいプラットフォームをつくることができないか、という理由からこういったことを考えているのですが、自分のできることから自分のペースでプロジェクトを立ち上げ、そのケースを積み上げていくことに今は専念しています。
そんな中、映像/メディアアーティストとして、同じくZAIMを拠点に活躍しているSHIMURABROS.と一緒に仕事をする機会が多くあり、それらの機会を通じて、現在彼らの制作活動をトータルで支援し、プロジェクトごとに作品の内容から、制作、販売まで一貫して一緒に考えていくスタイルを模索しています。こういった新しいスタイルで、継続性があり、お互い対等な関係で支え合う作家との新しい協業の方法を引き続き探っていきたいと考えています。

FECは、21世紀を迎えた東アジアで活躍するアーティストのためのクリエイティブ・プラットフォーム。プロジェクト&プロダクション志向を活動の柱とし、東アジア各国の現代美術の第一線で活躍される方の知見をヒヤリングしながら、アーティストと共に東アジアのアートシーンを一緒に作り上げていきます。横浜・ZAIMの1室を活動の拠点とし、馬車道近くのレジデンス施設(馬車道スタジオ)、北京と東京のリエゾンオフィス、東アジア各国のサポーターとともにプラットフォームを支えています。

金島隆弘[かねしま たかひろ](アートプロデューサー)
1977年、東京都生まれ。FEC代表兼ART iTプロデューサー(東アジア担当)。2002年慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了、ノキア、東芝、東京画廊を経て、2007年よりFEC(ファーイースト・コンテンポラリーズ)の設立準備、2008年4月よりZAIMにて活動を開始。横浜、北京、台北を中心とした東アジアの現代美術のリサーチプロジェクト、作家の作品制作支援、交流事業等を手がける。