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2014/02/23

コンサート

Just Composed 2014 in Yokohama 現代作曲家シリーズ ~声(こえ)る~ 作曲家・川上統さんとバリトン・松平敬さんへのロングインタビュー!

 Just Composed 2014 in Yokohama  現代作曲家シリーズ ~声(こえ)る~

 

作曲家・川上統さんとバリトン・松平敬さんへのロングインタビューです!

 

 

 

 
(小)松平&川上インタビュー20140112 068.jpg若手の作曲家に新曲を委嘱し、現代の旬の音楽をお届けする「Just Composed in Yokohama」シリーズ。(今年は3月1日(土)開催)

今回の委嘱作曲家である川上統(かわかみおさむ)さんと、当日のコンサートのメイン出演者、バリトンの松平敬(まつだいらたかし)さんに、「Just Composed 2014 in Yokohama」の聴きどころや新曲について、またお二人のバックグラウンドについてたくさんお話を伺いました!

 

 

 

Q:まず声楽をはじめたきっかけを教えていただけますでしょうか。

 

松平:父親が楽器店で働いていて、それもあり小さい頃から音楽を身近に触れていました。小学生からエレクトーンを習っていました。吹奏楽をやったり、中学生になると臨時としてコーラス部に所属し部員に混ざって歌ったりしていましたね。中学生ぐらいから音楽に興味を持ち始めて、そのうちに本格的に音楽の道に進みたいなと思うようになりました。その時、音楽で何が出来るかを考えたのですが、歌を選びました。先生とのつながりもありましたし、コーラスで歌うのは楽しかったので。歌を専門的に始めたのは中学生の終わりからです。中学で習っていた音楽の先生の知り合いを紹介してもらい特急で2時間かけてレッスンに通っていました。

 

 

Q:作曲を始めたきっかけは何ですか?

 

川上:両親とも音楽が好きで、特に父親は始終レコードを流していました。父親はクレンペラーの指揮が好きで、ワーグナーをよく聴いていました。その影響で小学生のころ、ずっとワーグナーを聴いていて好きになったのですが、当時はファミコン全盛期だったこともあって、ゲーム音楽も好きでした。

また、母親がピアノの教師なのですが、(当時自分と母親の共通の先生のレッスンについて行って)母の弾いていたドビュッシーの「子供の領分」などを聴いて好きになりました。中学生になってからラヴェルにはまりました。ワーグナーも好きだったのですが、フランスの音楽に興味が湧いていきました。高校時代はプロコフィエフが好きでした。

(小)松平&川上インタビュー20140112 006.jpgそれとは別に、大学に入るなら作曲を専門的に勉強しようと思って作曲科を受験することにしました。「なぜこういう曲が好きになるのか?」、ということが気になり、「音楽心理学」に興味を持つようになりました。東京音楽大学に音楽心理学の授業があると聞いたので、そこを受けようと思ったのです。

 

大学に入ったころはメタル系音楽やナンカロウにはまりました。特にナンカロウは、「色んなものがここに全て集まっている!」と思いました。その頃から今でも、"普通ではないもの"を書きたいと思っています。大学の間は雑食というか、ナンカロウ、フォーレ、クセナキスが好きでした。あとはリゲティのピアノ・エチュードもテレビで聴いてから好きになりました。リゲティが「ナンカロウはすごい」と言っていたのでナンカロウに興味を持つようになったのです。

 

今回出演の亀井さん(ヴァイオリン)は大学在学中から僕の曲を演奏してくれていたし、亀井さんも現代音楽に興味があったので、よく初演をしていました。大学院を出てからは、自分の作品を初演する機会があり、そのために書いていました。周りには頑張っている人がたくさんいるので、自分も頑張ろうと思ってやってきました。

 ちなみに、東京音大に受かって入学したら、音楽心理の授業がなくなっていました。もうカリキュラムになかったのです(笑)。

 

 

Q:現代音楽を演奏するようになったのはいつ頃からですか?

 

松平:最初、現代音楽は好きではなかったのです。中学生のころクラシックに興味を持ちはじめて、ラジオでクラシック番組を聴いていました。その中で現代音楽の演奏がありはしたのですが、当時は全く理解できませんでした。諸井誠さんの『現代音楽は怖くない』という本を読んだほどです。高校時代に「ひょっとしたら面白いかも」という気持ちが起こり、大学に入った時は好きになっていました。大学ではイタリアものの曲やドイツものの曲など、基礎的なことを学んでいましたが、作曲科の同級生の新曲も演奏したりしていました。大学院ではシェーンベルクの歌曲について研究しました。ですので本格的に現代音楽を学んでいたわけではありません。音楽の道は大変ですけれども、自分にしかできないことをやりたかったですし、誰も知らない道というのは面白いものです。

 

 

 

松平&川上インタビュー20140112 059.jpgQ:現代音楽を演奏するきっかけは何だったのでしょうか?

 

松平:シュトックハウゼンとの出会いでした。シュトックハウゼンの曲は、日本の評判は決して良くはありませんが、聴いてみるとすごく面白いのです。そこから興味を持って音源を聴きあさっていました。

 ところが彼の音楽に興味はありましたけど、当時コンサートではほとんど演奏されませんでしたし、LPレコードからCDへの転換期という時代だったのでほとんど聴けなかったのです。なぜなら彼の曲はCD化されていませんでしたし、販売形態が特殊だったからです。一般的な流通ルートで購入しようとすると、とても高額でした。

それからシュトックハウゼンの講習会を開催しているという情報を知り合いから得まして、2000年に初めて講習会に参加しました。その時は、聴きたい曲もありましたし、行くついでに何か教えてもらおうかなという気持ちで行ったのですが、行ってみたら大きな衝撃を受けたんです。それ以降、彼の講習会には全部で9回参加しています。とても気さくな方で色々なことを教えてもらうことができました。

 

 

 Q:川上さんも絵的な楽譜を書いたりするのですか?

 

 川上:自分はわかりやすく4分の3拍子とかを五線譜で書いています。でも演奏すると難しかったりします。現代音楽をなかなか取り組まない人にも演奏してもうためにもわかりやすさは重要だと思っていて、見た目は易しくしてある曲が多いですね。

思考の段階では手書きで五線譜に書きます。そしてピアノに向かいながらしぶとく音を選んでいきます。最初は手書き、浄書はパソコンソフトを使っています。手書きだと最近追いつかなくなってしまいまして(笑

 

 

 

(小)松平&川上インタビュー20140112 030.jpgQ:作曲のためにどこかへ出かけてインスピレーションを受けたりすることはありますか?

 

川上:以前、狛江(東京都)に住んでいたことがあるので、狛江に行って多摩川を眺めたりすることがあります。

あとは爬虫類をたくさん飼っていて、作曲している隣にいつもいます。(動画を再生しながら)これはミドリツヤトカゲという種類なのですが、それ以外にもサンドフィッシュというトカゲとか、ヤモリとか、ハゼやカメなど全部で8匹飼っています。

 

 

Q:川上さんの作品の多くには生物の名前が付いていますが、それはどうしてですか?

 

川上:僕は生き物の絵を描くことが好きなのです(川上さんが亡霊カマキリの絵を出す)。作曲するより生物の絵を描いている方がずっと楽と思う時があります。作曲と違って絵には対象がありますので。絵が先か曲が先かというと、順番としては曲を書いてから絵を描きます。僕は種々の図鑑や生き物が好きなのです。そんな生き物が好きということもあり、甲殻類でいつか作曲してみたいというのがはじめにありました。曲想も生き物の方が生き生きとしてくると思って作曲するようになりました。

 

 

Q:新曲のタイトルとなっている『鼻行類』とはいったいどんな生物なのでしょうか?

 

川上:「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、架空のものよりも実際に存在する生き物の方が変わっている場合が多いのです。たとえばギンカクラゲなんかは想像を超えた姿をしています。そんな生き物の姿を実際に見たり、YouTubeで動いている姿を見たりすると「ああ、面白いなぁ」って心から思います。架空のものについては恐竜の曲も書きます。いたはずだ、いるはずだって考えた時に想像を越えられるのです。

鼻行類を知ったのは、父親が「ゲゲゲの鬼太郎」で有名な水木しげるさんが好きで、家には画集などがたくさんありました。それを見て落書きをよくしているこどもだったのですが、水木さんの近作に世界幻獣事典という書がありまして、その中にこの鼻行類のことについて書いてあったんです。だいたい10年くらい前になりますが鼻行類のことを知った初めです。それから少し時は経ちましたが、今また鼻行類に注目しています。ハラルト・シュテュンプケ(架空の名前)という作家が戦後10年ぐらいに、架空ということを伏せて発表したらみんな信じてしまったといいます。ハイアイアイ群島という架空の島に、鼻で歩いたり、鼻で獲物を捕えたりする生き物を発見したと発表したことから始まったのです。これを読んでみると、もの凄い描写が細かくて本当にいるみたいに書いてあるのです。ただ、よく読んでみると本当にとんでもなく突拍子も無い事がまことしやかに書いてあり、突拍子も無いのですがこの本気度に僕はシビレます。それで、これはぜひ書きたいなと温めていました。

 

 

 ――それで新曲のテーマが「鼻行類」になったわけですね。

 

 

(小)松平&川上インタビュー20140112 072.jpg川上:最初に松平さんの歌を聴いたのはちょうど10年前の2004年です。松平さんの歌もクセナキスの曲もこれは色々と越えているなと思いました。今回の話をいただいた時に、松平さんの歌を念頭において作曲してほしいとありました。最初どういう曲にしようかと考えた時に1度松平さんからミナミコアリクイのリクエストがありましたが、これはいつか取り組みたいと思っています。

僕の曲はいつも、短めの曲になることが多いのですが、今回は大きな枠にしようと思った時に、よし、鼻行類にしようと思いました。生物の曲を書くときにその生物の鳴き声を参考にするというよりもいつも造形やその生き方(生態)を参考、投影しようとしますが、この鼻行類はここまで細かく書いている物なのでこれにしようと決めました。

 

 

――新曲の構成などは決まっているのでしょうか?楽章とかありますか?

 

川上:今回は全部で5種類の曲を組曲的に仕上げるつもりです。これにプロローグとエピローグが付きます。

ただ、ほとんど曲と曲の間には切れ目が無く、続いているような曲になると思います。楽器編成的には今回の出演者全員(歌、ピアノ、ヴァイオリン、打楽器)です。カエル木魚、モーモー缶...モーモー缶はかなり今回重要です。飛び道具です(笑)。どんな音が鳴るのか楽しみにしてください。

 

 

Q:新曲と「声る」というタイトルとの関連性を教えていただけますか?

 

川上:声という楽器は100%の記譜は不可能なものだと思っています。そして声には絶対に楽器では太刀打ちできないほどの音楽の始祖としての部分があります。楽器よりも声の方が非現実のものにできると思いました。それで鼻も関係していますので声と関連させると面白いと思いました。

松平:「声る」というのは池辺館長が提案したのです。「声を越える声」というコンセプトを汲んで「声る」としました。

 

 

 

(小)松平&川上インタビュー20140112 066.jpgQ:今回のプログラムについて、どんな曲か少しだけ教えていただけますか?

 

 今回は色々な「超える」があります。「モノヴァランス」は「性別を超える」という意味で入れました。40年くらい前に作曲された声楽ソロ曲なのですが、ファルセットで歌う部分があります。五線ではなく三線で書いてあるところがそうなのですが、歌うと少し怪しい雰囲気です(笑)

 

バロック時代の作曲家、シャルパンティエの曲は、当時では珍しい声楽ソロの曲です。バロック音楽では、楽器のソロ曲はたくさんありますが声楽のソロ曲というのはほとんどありません。あるとしても通奏低音が入っています。この曲は偶然買ったCDに入っていたのですが、ラテン語の歌詞がついている無伴奏曲です。とても珍しい曲です。「時代を超えて」います。

 

中ザワヒデキさんの作品は、「ジャンルを超えて」います。彼は音楽家ではなく美術家です。今回演奏する「順序」は歌曲なのですが、中ザワさん自身は音符を書いていません。楽譜には「一、二、三、四」と漢数字が書かれていて、一はド、二はレ、三はミ、と仕掛けはとても簡単なのですが、途中で言葉とリズムがずれてきたり、最後に一拍休符を入れたりするので、間違えるとお客さんにバレてしまいます。演奏していると変な高揚感があって、とてもスリリングです。今回は6曲あるうちの4曲を演奏しますが、最後の4曲目は面白い仕掛けを考えています(笑)。

 

「インヴェンションⅢ」は、日常生活で喋っていることを音楽に変換している作品です。もともとは歌、打楽器、トランペットの編成で作曲されていますが、今回はトランペットの代わりにヴァイオリンで演奏します。形態模写のようなもので、ヴァイオリンはポルタメントができますし、喋る真似もできると思います。全部を完璧に模倣するのではなく、カッチリ決めたりゆるくやったりします。現代音楽になじみのある人の「想定を超える」作品だと思います。演奏だけではなく、演劇的な要素も少し入っています。

 

藤倉大さんの「my letter to the world」は日本初演になります。プログラムに入れたきっかけはツイッターです。藤倉さんがツイッターで「ヨーロッパで初演したものを日本で誰か初演してくれないかなあ」のようなことを呟かれていたのです。それを見た複数の人が自分(松平さん)を紹介してくださったみたいで、それまで藤倉さんとは面識がなかったけれど周りの人の推薦で演奏できることになったのです。10年、20年前なら有り得ないことですね。インターネットによって「国境を越えて」いてもお互いに繋がることができ、話がサクサクと進みました。

 

「醸鹿」は2003年のJust Composed新曲委嘱作品です。ピアノ、ヴァイオリン、フルートという編成の曲なのですが、今回のためにフルートのパートを歌と打楽器に編曲してもらいました。

 

※このインタビューは112日に横浜みなとみらいホールにて行われました。

 

31()18時開演「Just Composed 2014 in Yokohama」公演の詳細はこちらから。

〒220-0012 横浜市西区みなとみらい2-3-6

チケット・公演内容について

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