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アントワン・タメスティ独占インタビュー!

2016年11月22日(火) / インタビューコンサート

横浜に初登場のヴィオラ奏者、アントワン・タメスティにインタビュー!

ヴィオラをはじめたきっかけ、また122日に演奏するプログラムについて等々、たくさんお話を伺いました。

 

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――まずヴィオラを始めたきっかけを教えていただけますか。

タメスティ(以下T):5歳の時にヴァイオリンを始めました。父はヴァイオリンを演奏するのですが、私たち家族にとってヴァイオリンはとても大切な存在でした。それで5歳の誕生日にヴァイオリンが欲しいとお願いしたのです。ヴィオラを始めたのは9歳の頃、J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲の録音(*1)を聴いたのがきっかけです。深く美しい音色に魅了されました。先生にチェロを弾きたいと言いましたが、指や身体のポジションがヴァイオリンと全然違うので、全てをまた一から学ばなければいけないと言われました。そこで一つだけヴァイオリンにもチェロにも近い楽器があるといってヴィオラを教わりました。チェロとヴィオラは同じ音の弦が張られています(Cド・Gソ・Dレ・Aラ)。そして先生が自分のヴィオラを見せてくれたのですが、私はこれがとても気に入ったのです。これこそが私の一番好きな楽器なのだと思いました。ヴィオラはクリスタルのように輝く音を持つヴァイオリンと、深く大きく広がるチェロと、両方の世界を持ち合わせています。もう楽器を変えたくはありません(笑)

 

――本公演のプログラムについて伺います。プレコンサートで演奏するJ.S.バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタは以前にも日本で弾いたことがありますか?第3番は一番好きな曲?

T:だいぶ前にヴィオラスペースでチェンバロと演奏したと思います。もちろん3曲全て好きですけれど、特に3番は好きです。このソナタをヴィオラ・ダ・ガンバではなくヴィオラで弾くことに疑問はありますが、ヴィオラ・ダ・ガンバという楽器は私の大好きな楽器の一つですし、特に3番は音色や味わいがヴィオラにとても近いと思うのです。優人と今後一緒に演奏しようと計画していて、今回はそのパートナーシップの第一歩なのです。

 

――鈴木優人さんとの共演は初めてですか?

T:数年前、彼がプロデュースする調布音楽祭にソロで出演したのですが、アンコールでバッハ・コレギウム・ジャパンと共演しました。その中で優人も演奏していました。これまで私たちは会う機会がしばしばあって、育った環境・文化や受けてきた教育は違いますが、彼には近いものを感じるのです。フィーリングが合い、お互いをとてもよく理解し合えます。音楽について話していても、方向性やテイストが近いと感じます。今後もっと共演したいと思っています。

 

――将来、鈴木優人さんと共演したい曲はありますか?

T:バッハを制覇したいですね。まずはヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ全曲です。

 

――次にシュニトケについて伺います。日本でシュニトケを演奏するのは初めてですか。

T:ヴィオラスペースでシュニトケのヴィオラ協奏曲(モノローグより編成が大きい作品)を演奏したことがあります。今回演奏する「モノローグ」はヴィオラ協奏曲より編成が小さく、演奏時間も17分くらいです。ヴィオラと弦楽器だけですが、私が特に好きな曲で、これまで何度も演奏してきました。

 

――初めて「モノローグ」を演奏したのはいつですか?

T:20032月でした。私にとってコンチェルトを演奏した最初の大きな舞台で、ウィーン・コンツェルトハウスでウィーン室内管弦楽団と共演しました。指揮はなんと下野竜也さんだったのです!

 

――タメスティさんにとってシュニトケの音楽の魅力、また面白いと思う部分はどんなところですか。

T:彼の音楽はバロックや古典派から影響を受けています。もちろん音符や調性がまさに一緒というわけではありませんが、過去の作曲家の要素が彼独自の色彩や言葉に置き換えられています。バロックや古典派の音楽を聴いているわけではないのに、どこか親しみを感じるのです。聴いている人たちはバロックや古典派の音楽を知っていて、同じような型の音楽をしているけれど、それが現代に置き換えられている、そして人々は新しい音楽を聴いているように感じる...そこが面白いと思います。ショスタコーヴィチもそうですが、とてもパワフルな音楽で、でも複雑ではなく、とてもシンプルです。シュニトケの音楽は、時にショスタコーヴィチのように聞こえますが、とても優れた素晴らしい音楽なのです。

 

――ヨーロッパの演奏家はシュニトケを演奏する機会が多いのでしょうか。

T:そう思います。ショスタコーヴィチほどではありませんが、ギドン・クレーメルやユーリ・バシュメット、ナターリヤ・グートマン、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(2007年没)などの演奏家がヨーロッパに持ち込み、たくさん弾かれるようになりました。彼らはシュニトケに作品を委嘱し、初演してきたので、演奏会のプログラムにシュニトケの作品を組み入れることが容易にできたのです。バッハとシュニトケは全然違う作曲家ですが、両方とも古典的なオーケストラの編成で弾くことができる、そこも面白いところです。例えばソロでバッハを弾いた後、リゲティを弾くと、同じ楽器・同じ空間・同じ場所で演奏しているのに全く違う世界が広がります。お客様にとっても同じ楽器を演奏しているのに、全く異なる音楽・世界が広がっていると感じてもらえると思います。

 

――シュニトケに実際にお会いしたことはありますか。

T:残念ながらありません。1999年にパリ国立高等音楽院を卒業したので、彼が亡くなった時(1998年)はまだ学生でした。ただヴィオラ協奏曲を録音した時、指揮はドミトリー・キタエンコだったのですが、彼はシュニトケに会ったことがあり、ヴィオラ協奏曲もシュニトケから学びました。また私はバシュメットから12回レッスンを受けたことがあるのですが、彼もシュニトケと緊密に仕事をしていた方です。クレーメルもそうです。私はシュニトケのことを知るために、彼と一緒に仕事をしてきた演奏家たちと仕事をしました。それによってシュニトケの振る舞いや考え方を知ることができるのです。彼の人生は悲痛な感情に溢れていて、彼の音楽―ゆっくりと演奏される長い音―は深い悲しみを現わしている...これは彼特有の手法です。私たちはバッハやモーツァルトについて書かれた本を読むことができます。しかし彼らの性格について、またどんな心や精神を持っていたのか、細かく描写されているものはほとんどありません。20世紀や現代の作曲家について、それを知れることは良いことですし、とても大事なことだと思います。

 

――作曲家や演奏家など、タメスティさんが最も影響を受けた人物は誰ですか。

T:たくさんいます(笑)。10代の頃はパリにいたのですが、昔のヴァイオリニストに興味がありました。ダヴィート・オイストラフ、ヤッシャ・ハイフェッツ、ナタン・ミルシテインなどを尊敬していました。その後はマキシム・ヴェンゲーロフ(1974-)など。アメリカで勉強していた時はヴィオラ奏者に関心があり、ウィリアム・プリムローズは80年代に亡くなりましたが、素晴らしいソリストでした。またユーリ・バシュメット、タベア・ツィンマーマン、今井信子、キム・カシュカシャンなどは当時とても大きな存在でした。カシュカシャンとは余り接点がありませんでしたが、ツィンマーマンの下で学んだ後は、今井信子やバシュメットのマスタークラスを受け、この3人は私にとってとても身近な、友人のような存在で大変尊敬しています。彼らと室内楽などで共演もしています。ヴィオラ奏者として彼らの音楽を知ることはとても大切なことですし、大きな影響を受けました。3人ともそれぞれ個性のある音色です。また最近はヨーヨー・マ、ピアニストではクリスティアン・ツィメルマン、マルタ・アルゲリッチ、エフゲニー・キーシンなどからも影響を受けています。今生きている演奏家を尊敬し、彼らと交流して音楽への考えを知るのは大切なことだと思います。ピエール・ブーレーズやオルガ・ノイヴィルトやイェルク・ヴィットマン、野平一郎など、作曲家と直接会うことも大事です。エマニュエル・パユも私にとって大切な存在で、彼からたくさんのことを学んでいます。

 

――ご自身で作曲やアレンジをする機会はありますか?

T:アレンジと言いますか、ヴァイオリンの曲をヴィオラで弾いたり、クラリネットの曲をヴィオラで弾いたりすることはありますが、楽譜はオリジナルのものを使用しています。自分には作曲する才能があると思えません(笑)。いい作曲家がたくさんいますから。私は弾く方が好きですね。

 

――作曲家に委嘱することはありますか。

T:あります。初演もたくさん行いました。ブルーノ・マントヴァーニは、タベア・ツィンマーマンと私のために「2本のヴィオラのための協奏曲」を作曲しました。オーストリアのオルガ・ノイヴィルトも協奏曲と、その後にソロも書いてくれました。最近だとドイツのイェルク・ヴィットマンも大きな素晴らしいヴィオラ協奏曲を書いてくれました。初演はパリでパーヴォ・ヤルヴィが指揮をしました。ヤルヴィは日本によく来ているからご存知ですよね。

 

――プライベートについて少し伺っても良いですか。休日は何をしていますか。

T:子供が2人いますので、家で過ごすことが多いです。私のもう一つの仕事は父親ですから。彼らから学ぶこともありますし、また彼らの教育のために何ができるかを考えたいです。家に帰ってきて挨拶してまた出て行くだけではなく、一緒にゲームやスポーツをしたいです。それともっと時間があれば、演奏する曲や作曲家に関する本を読みたいです。映画も観たいですが、なかなか時間がありません。

 

――お子さんは何か楽器を演奏されますか?

T:まだ息子は4歳で娘は2歳です。でも息子は和太鼓に夢中なのです。彼に小さい和太鼓を買ってあげたら、「(上着を)脱いでいい?」と言って下着姿で叩くのです(笑)。最近もアフリカの楽器、ジャンベを買ってあげました。とても上手いんですよ。

 

――最後に、コンサートを楽しみにしている日本の皆さんにメッセージをお願いします。

T:同じオーケストラのサイズ、そして同じ楽器で異なる時代の、全く違う3人の作曲家の音楽を聴くことができます。客席から動かずに壮大な400年の旅をしているような気分になるでしょう。バッハの幻想曲はとても神聖で、モーツァルトのアリアはオペラの世界へ皆さんをお連れします。最後のシュニトケは少し悲しいですが、とても深遠で意義のあるプログラムです。日本の皆さんにはそれぞれの作品で独特な雰囲気・感情を感じとっていただけると思います。

 

1:ポール・トルトゥリエ(1914-1990)の録音。

 

演奏が素晴らしいだけでなく、その気さくなお人柄にも惚れ惚れしました。

122日の公演はバッハとシュニトケと、編成を変えてタメスティさんのヴィオラをお聴きいただけます。

皆様のご来場を心よりお待ちしております!


12/2「アントワン・タメスティと日本の俊英たち」公演詳細

 

201610月取材

取材/横浜みなとみらいホール

取材協力/ジャパン・アーツ、姫路国際音楽祭実行委員会

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