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横浜音祭り2016ディレクター 新井鷗子さんインタビュー

2016年9月06日(火) / インタビュー

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横浜の"街"全体を舞台とした大規模な音楽フェスティバル「横浜音祭り2016」が、いよいよ9月から始まります。2013年に続いて第2回を迎える今回のフェスティバルのテーマは「スーパーユニバーサル」。世代、ジェンダー、ジャンルを超えて、あらゆる人々の心を揺さぶる音楽が横浜の街にあふれ出します。

横浜みなとみらいホールでも、オーケストラ、バレエ、オペラ、ピアノなど様々な公演を集めてお待ちしております。

 

横浜音祭り2016ディレクターの新井鷗子さんに、「横浜音祭り(ヨコオト)」が目指すもの、注目の公演などについてお話を伺いました。

 

 

"横浜らしさ"を貫くからこそ、だれもが楽しめる「ヨコオト」

 

----今回で第2回目の開催となる「横浜音祭り2016」、通称「ヨコオト」とは、どのような音楽祭なのでしょうか。

 

今回の音祭りでは、「スーパーユニバーサル」をテーマとして掲げています。ユニバーサルとは、「万人に通じる」という意味です。横浜音祭り2016は、だれもが楽しんで参加できる音楽祭でありながら、そこに横浜らしさがきちんと貫かれた音楽祭を目指しています。横浜には美しい山と港があり、自然も多く残されています。港から海外の文化がいち早く入り、横浜というフィルターを通って日本に広まったという歴史のある街です。横浜の人々はいろいろなものを受け入れる柔軟さと、自分たち流にアレンジして飲み込んでいく強(したた)かさとを併せ持ってきました。こうした街に相応しい音楽祭とは、何かひとつのジャンルに縛られることなく、世代・国籍・ジェンダー・障がいの有無に捕われず、多くの人を巻き込むようなものだと思います。

 「ヨコオト」にはクラシック音楽、ポップス、ジャズのベテラン・若手アーティストが登場するほか、アイドルグループや、横浜の市民音楽家たちが集い、横浜みなとみらいホールを始めとする音楽ホールやシアターはもちろん、市内の駅や商業施設、公演などのオープンスペースまで、街全体をステージとして繰り広げられます。

 

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----「音祭り」は2013年に第1回が開催されましたが、第2回でさらに飛躍させたいと思ったところはありますか?

 

1回もジャンルに縛られることのない「ネオ・クロスオーバー」を目指したのですが、異なるジャンル同士が深くコラボレーションするまでは私の力不足で至りませんでした。同じ舞台上でロックやポップスやクラシック音楽を並べることはできたのですが、それらが音楽的に深く融合するというところまではいかなかったのです。今年はぜひ実現させたいと思っています。

 たとえば、オープニングコンサートの「玉置浩二プレミアム・シンフォニック・コンサート」(9/22)は、まさにクロスオーバーの企画です。玉置さんはここ数年、オーケストラとコンサートをしています。私も一聴衆としてコンサートに伺ったところ、とても感動したのです! ぜひ音祭りに来て下さいと、体当たりでお願いをして、今回のオープニングを飾っていただくことになりました。

 通常はポップスの歌手との共演というと、オーケストラの演奏は完全に歌の「伴奏」になってしまう事が多いのですが、玉置さんの公演では、一流のアレンジャーたちによる非常に凝った編曲で、とても厚みのあるサウンドをオーケストラが奏でます。歌手とオーケストラとが対等な関係で音楽を織りなし、歌唱の付いたマーラーのシンフォニーを思い起こさせる迫力です。玉置さんのコンサートで初めてオーケストラを聴き、その素晴らしさに目覚めたという方も多く、ジャンルを超えた音楽ファンの交流が始まっています。

 

 

未来にはばたく若いエネルギーを世界に発信!

 

----音祭りのコンセプトには、「世界への発信」「次世代育成」「市民参加」も掲げられていますね。

 

この音楽祭は、2020年を契機とした日本全国の文化芸術の取り組みをリードし、海外への発信や国際交流、子どもたちや若手の育成も積極的に行います。

 たとえば「横濱JAZZ PROMENADE 2016 関連企画」(10/7)では、若手ジャズミュージシャンのコンテストを行います。優勝したグループはデトロイトジャズフェスティバルに派遣され、演奏の機会を与えられることになっています。

 また「クールジャパン」の代表的な存在に、アイドルがあります。アイドルのパフォーマンスは、音楽のみならず振り付けなど、いろいろな要素で構成されています。国内外で人気のアイドルグループ「でんぱ組.inc」は東アジア文化都市2014横浜の親善大使であり、彼女たちの活動を通じてアジアや世界に発信していきます。また、アイドルにあこがれる子どもたちに向けて、「でんぱ組.inc」がワークショップを行い、選抜メンバーは10月に行われる彼女たちのライブで共演します8~10)

 西本智実さんが指揮するイルミナートフィルハーモニーオーケストラ(9/21)は、いろいろな国籍を持った楽員からなるオーケストラです。今回は市内の少年少女合唱団と共演し、宮川彬良さん編曲による日本の童謡メドレーを披露します。ゲスト出演されるトランペット奏者の日野皓正さんも、子どもたちの育成にとても積極的な方なので、会場では何か子どもたちを巻き込むサプライズ演出を企画しています。


豪華な顔ぶれが並ぶ注目公演も

 

----およそ2ヶ月間におよぶ大規模な音楽祭ですが、いくつか注目の公演を教えてください。

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 「オーケストラル・バレエ〜踊りと語りで楽しむバレエ音楽コンサート」(10/29)では、指揮とお話に青島広志さん、熊川哲也さんの育てる若手ダンサーたち、そして語りにNHK大河ドラマ「真田丸」の石田三成役でもおなじみの山本耕史さんという豪華な顔ぶれが登場です。山本さんが朗読する音楽物語「白鳥の湖」は、私が1995年に執筆したものです。これまでに何度も上演されてきましたが、バレエのマイム付きでの上演は今回が始めてです。

 「ミュージック・イン・ザ・ダーク〜障がいとアーツin 横浜」(11/3)は、視覚障がいのある方が4名加わった弦楽オーケストラの演奏会です。演奏中にだんだん照明が落ち、最後は真っ暗闇へ。奏者もお客様も何も見えない中で演奏は続きます。誰もが視覚が働かないという同じ条件は、一体何をもたらすでしょうか。ひょっとすると聴覚が研ぎすまされるのかもしれません。

 そのほか、横浜全18区で開催する別所哲也さんプロデュースによるピアニスト清水和音さんの「ショートフィルム&コンサート」や、パーヴォ・ヤルヴィさん指揮ドイツ・カンマーフィルと樫本大進さん(Vn)との公演によるクロージングコンサート(11/27)にもぜひ注目していただきたいですね。

 

大規模な音楽祭をつくるディレクターのしごと

 

----テレビのクラシック音楽番組やコンサートのプロデュースなど、多岐にわたるお仕事を手掛けておられる新井鷗子さんですが、これまでにも横浜と接点はありましたか? また「ヨコオト」を作るにあたって、どんなアプローチをされたのでしょうか。

 

横浜みなとみらいホールでは、コンサートの構成を何度か手掛けてきましたので、ホール開館時からの長いお付き合いがあります。しかし、音楽祭の最初の年は、あらためて横浜を知るところから始めました。

 横浜にはどんな音楽が似合うのだろう? 横浜の人たちにはどんな音楽が喜ばれるのだろう? 手探りで見つけるために、街のさまざまな音楽会やライブハウスに足を運び、地元の方や文化観光局の方にお話を伺ったりしてきました。


 

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----多ジャンルに渡る音楽と人々とをつなぎ、深く結びつけようとする横浜音祭りの試みは、非常にチャレンジングなものなのではないでしょうか。

 

この音楽祭ほど多様なジャンルが入っている音楽祭はないし、規模も世界最大級だと思います。これをまとめようとするのは本当に大変な仕事です。また、音楽は「国境を越える」とか、「垣根を越えられる唯一のジャンル」などとよく言われるけれど、私は、「音楽の力」によって境界線が越えられるのではないと思っています。音楽とは、それが生まれた地固有の文化や言葉とあまりにも深く結び付いているものなので、そう簡単に「国境を越える」ものではありません。越えようとすればするほど、容易にはいかないのです。

 しかし、音楽を奏で、境界線を越えようとする「人間の力」によって、さまざまな垣根は越えられるのではないかと、私は信じています。音楽を奏でる人々が、あらゆる境界を乗り越えようとする力がこの横浜音祭りに結集します。やはり超えられなかった、わからなかった、そう気付くのでもいいんですよ。それでもやってみる。会場に訪れて聴いてみる。そうして多くの方々が、少しでも音楽を楽しんでいただけたら嬉しいですね。

 

 

新井鷗子(あらいおーこ)

東京藝術大学楽理科および作曲科卒業。1998NHK教育番組「わがままオーケストラ」の構成で国際エミー賞入選。音楽番組「題名のない音楽会」等の構成を担当した。東京藝術大学特任教授、洗足学園大学客員教授。

 

(取材・構成/飯田有抄)

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