情報誌 毎月22日発行

8月号 / 2010

:インタビュー「山口ともさん」

10.07.15


山口ともさん

日本廃品打楽器協会会長 打楽器奏者 写真家
山口とも 氏

TOMO YAMAGUCHI

プロフィール

祖父、山口保治は「かわいい魚屋さん」「ないしょないしょ」など数々の童謡を創った作曲家。父、山口浩一〔新日本フィルハーモニー/ティンパニー名誉首席奏者〕の長男として東京に生まれる。
つのだ☆ひろのアシスタントとして音楽の世界に入る。1980年「つのだ☆ひろとJAP,S GAP,S」でデビュー。解散後、フリーのパーカッショニストとして中山美穂・今井美樹・平井堅・石井竜也・サーカスなど、数々のアーティストのツアーやレコーディングに参加。
95年の音楽劇「銀河鉄道の夜」をきっかけに廃品から様々なオリジナル楽器を作るようになる。おおたか静流とのスピリチュアルなライブパフォーマンスやロックの中山ラビ、アヴァンギャルドジャズの三宅純等活動の場を広め、04年には日本演芸協会の福岡詩二氏から"打楽器コメディアン"の称号をもらい、浅草東洋館に出演、好評を博している。03年4月から06年3月までNHK教育テレビ「ドレミノテレビ」に"ともとも"の愛称でレギュラー出演していた。
「音楽=音を楽しむこと」をモットーに近年は子供から大人まで楽しめる音楽を目指し、オリジナル廃品楽器を使ったパフォーマンス活動をして注目を浴びている。ガラクタに命を吹き込む打楽器奏者。

有限会社 TOMO OFFICE


(イベント情報)

◆「はつみ先生&Ticoboの「パイプオルガンとガラクタがっきコンサート」
日時:8/6(金)14:00~
会場:横浜みなとみらいホール
詳しくはこちら

Ticobo


◆「ブラックベルベッツ」ライヴ
日時:8/17(火)
会場:モーション・ブルー・ヨコハマ
横浜赤レンガ倉庫モーション・ブルー・ヨコハマにムードミュージックの第一人者、ブラックベルベッツが登場。今、丸の内OLの間で話題沸騰中!
詳しくはこちら
ブラックベルベッツのHPはこちら

絶対に音楽家にはならないようにしよう

小さい頃のお話をお聞かせください。おじいさまは作曲家、お父様は打楽器奏者という環境は非常に特殊だったと思うのですが、お二人の姿は子どもの頃のご自身にどのように映りましたか?
絶対に音楽家にならないようにしようと思いました。
それは、なぜですか?
おじいちゃんのソルフェージュの時間よりも遊んでいたいって。他の生徒と一緒に3人男兄弟で同じ時間に習わせられていたんですよ。もう、いやでいやで。いつもどうやって遊んでやろうかなって考えていました。それに、みんなと同じことをしなければいけないというのがすごく嫌だったんですね。根本的にそんなものがあったような気がします。
プレッシャーもあったのでしょうか?
プレッシャーを感じたことはほぼありませんね。自分も音楽をやっているけど全然違う道で、比べられる必要もないんじゃないっていう感じで。比べてもらわなくて結構!と思っています。
小さい頃はどんなものに興味があったんですか?
プラモデルですね。作ることが好きだったんです。目が悪くなったのもプラモデルのせい。でも学校の図工はあまり成績が良くなかったんですよ。
どんなプラモデルを作っていたのですか?
兵器が主流でしたね。僕はそういうのを赤に塗ったり、花柄にしてみたり、そういうことが好きだったんですね。本物そっくりに作るのがプラモデルの醍醐味なのかもしれないけど、うまい人はたくさんいるんで、自分にしか持てないカラーの飛行機「同じかたちだけど違う」っていうものに興味があったんです。
色を変えると、同じものでも雰囲気がすごく変わりますね。
例えば飛行機は、空を飛べる道具として最高に楽しいものだったら、こんな色でもいいのかなって。自分で考えて色は塗りましたね。だから僕が乗っている車も、買うときに「この色にして」って頼んで塗ってもらったんです。
色は重要なんですね。
重要ですね。ヨーロッパの車って素敵な色がたくさんあるでしょう。ああいうものに惹かれる自分がいるんですね。みんなも、自分のものにはもっとこだわって、こうありたいなっていう欲がもっとあってもいいのにって思いますね。
小さな頃はプラモデル、そして、今はまっているものは?
うーん。はまっているものって、趣味からの延長なんですね。廃品打楽器作りは、ずっとはまってますね。作ってみないとわからない、出てくる音が想像できない、廃品打楽器作りには、そういう面白さがあるんですね。あとは、息子のレゴとかプラレールもいいなと思っています。

世界でたったひとつ ~廃品打楽器の魅力~

街を歩いていて、楽器になりそうなものを見つけると、叩いてみたくなりますか?
その場で叩くとちょっとまずいので、まずはどうやって持っていこうか...と考えます。『汚いなー。でも洗えばきっと大丈夫だな』とか。そのへんの見極めも大事ですね。『これは、きれいにするのが難しいな...』というものは拾わないようにしています。廃品って聞くと、汚い、くさいとか思われちゃうと困るんで、そこは注意して拾っています。とっておいてくれる人もいるんです。ありがたいですよ。感謝・感謝です!
廃品には、明らかに誰かが捨てたもの、誰かがまだ所有しているものとか、様々なパターンがあると思うんですけど、それらをどのような手順で手に入れるのですか?
例えば、あそこに置いてある大きな青いポリバケツ。あれは、演奏で地方をおとずれた時、りんご農園に行く機会があって、その時、大きな青いバケツが目に入ったんです。どうやって手に入れたかをお聞きすると、ある酒屋さんを紹介してくださいました。酒屋さんに行って、実際にその方とお話してみると、そこは以前、漬物工場だったそうで、ポリバケツは中国から漬物の原材料を運ぶために使われていた容器だったとか。どうやって廃棄しようかと悩んでいたそうで、喜んでそのポリバケツを譲ってくださいました。
廃品打楽器で、自分の予想とは全く違った音が出たということもありますか?
好きな「スペーススプリング」という廃品打楽器がそれですね。業務用のカレーが入っていた大きな空き缶にバネをつけて音を出しら、とんでもなくスパイシーな音が出たんです。その時はびっくりしましたね~。
素敵な音に出会ったときの気持ちを言葉で表現すると?
「え~~~~~~~!?」って、とってもうれしい感じです。「世界でひとつ??」「僕は天才?」
みんなに聞かせたくなりますね。
「ガラス琴」という楽器もものもあるのですが、それはものすごく澄んだきれいな音なんです。どうしてこんなきれいな音が?って目からウロコ的な感じです。
素敵な音が出たけれど、色々調整しているうちに、その音じゃなくなっちゃった...ということもあるんでしょうか?
ありますよ。例えば、車のホイルキャップ。今はプラスチックですが昔は金属製の物が多かったです。それをドラムセットで使われているシンバルーの変わりにこのキャップを叩きたいと思い、それだけを叩いても音の伸びが今一、バネを貼ったり、ビール瓶の蓋を付けたりし思ったような音にはなったのですが、欲が出てビール瓶の蓋をたくさん付けたら音が止まってしまったことがありましたね。

「この音を聞かせたい」

ワークショップで、お子さんとペットボトルを活用したシェーカーを作っていらっしゃるという記事を拝見しました。「既成の楽器」と「作った楽器」の違いはどのようなところにあると思われますか?
例えば、僕が使っているドラムセットは、既成のドラムセットに似せて作ってはいるものの、売っているものにはない音が出ます。作ったものなのか既成のものかなんて、CDとかラジオではわからないじゃないですか。今は、コンピュータでどんな音でも作れちゃうわけだし、録音してサンプリングっていう作業をすると、鍵盤を押しただけでその音が出て、音程まで変えられる世の中で、それがちゃんとした楽器である必要性があるのかな?って思うんですね。そういう音がしていれば、既成の楽器じゃなくてもいいんじゃないかって。お金を出して買わなくていい、自分がいいと思う音を作ろう!というのがきっかけです。

この頃は特に、目の前で演奏されない限り、楽器の価値っていうのがわからない気がします。楽器の音は、その楽器そのものを見て聞いて感動してもらう。子どもの前でも、CDの音楽を流すだけじゃなくて、生の音の良さ、本物の楽器の音の良さを知ることが必要なんです。値段にかかわらずいい音が出るっていうことを知るためにも、いい耳を持てるようになって欲しい。

そして、大切なのは気持ち。「この音を人に聞かせたいんだ」っていう気持ちが大切。そうやって出される音はいい音だと思うんです。演奏する人の気持ち、そういうのがないと人間の心にはグッとこないというか...。人間が聞くものを機械で作るってどうなんだろう?色んなものを見たり聞いたりして本当にそう思いますね。そういうことを言っている、変なおじさんがひとりでもいればいいかなって思ってます。
打楽器を選ばれた理由はありますか?
生まれてすぐの赤ちゃんもそうですけど、叩いたり、投げたりするじゃないですか。やっぱり人間の本能に近いところにあるというか、叩くことで音が出るという、一番単純な楽器ということで選んだということもあるし、小さい頃から身近にそういう楽器があったというのもありますね。それに、パーカッション・打楽器っていう楽器は、ギターとかベースとかに比べて自由に感じます。ベースとかドラムとかピアノとかの人が音楽の基礎となるものを作ってくれたとしたら、パーカッションは色をつけるもの。そういうふうに考えています。
パーカッションがあることで、耳から景色・空気・風などを感じるとることができて、全身で音楽を味わえる気がします。
『この曲は南国っぽいなぁ』と思えば、それに対してリズムを入れていくのもいいんだけど、波の音を入れてもいいですよね。これは雨っぽいから、雨の音を入れようかなとか、そういう自由さも好きなんです。そのヒントとなったのは、昔の映画の音響効果に関する本を読んだとき。そこには「映画の音響効果は、本物の音を録音して画面にあてるのではなくて、その音を一から作る」そういうことが書いてあったんです。それって面白い!と思ったんですね。自分もパーカッションの中にもそういうものを取り入れたいって。自然界の音はみんなが知っているから、音を聞いたら説明なしで「あぁ、雨が降ってきた」とイメージできる。そういうことが自由にできるパートだし、本物に限りなく近い音がでる楽器を作れるし、探せるし、奏でることができる。魅力いっぱいのパートだと思っています。
コンサートに行くと、パーカッショニストが一番楽しそうに見えるのは、そういう自由さもあるからでしょうか?
レコーディングでも、他のパートはきちんと譜面があるのに、パーカッションは「with feeling」ってなっているんですよ。パーカッションの人が来れば、どうにかしてくれるって状況。それで「with feeling」という言葉が出てきちゃうんだと思うんだけど、それも魅力のひとつ。「だって、feelingでしょ?」って。さっきはこうやったけど、今度はこれやっちゃおうかなって。その自由さにすごく惹かれます。

「いい音だと思わない?ちょっと聞いてみて!」

@ティコボのコスチュームは山口さんがお考えになったものですか?あの頭は面白いですね。
そうです。あの頭は以前、四日市にワークショップをしに行ったときに、あの付近にたくさんある自動車の部品メーカーの方が、「自動車の配線を束ねるパイプがたくさんあるんですけど何かに使えないですか?」って、いっぱい持ってこられたんです。くるくる回したり、振ったりして楽器として利用するのも良かったんですけど、たくさんいただいたので、ちょっとかぶってみようかな...ということになって。「ティコボ星」のトゲトゲ星人が生まれたんです。パイプがトゲトゲのイメージだったんですよね。
足のストッキングの中に何か入れていますね。
あれは肉球です。猫からヒントを得たんです。発砲スチロールで作ったんですけど、皮膚と接触している部分だけ汗をかくんで、すごく暑いんです。「さわらせて!」という人がいっぱいいますよ。
ティコボは、山口さんの音楽活動の中で、どういう位置にあるものですか?
メンバーはみんな私の弟子なんです。自分のパフォーマンスの活動を見た連中がやっているので、普通の打楽器奏者と比べたら廃品等に対しても、結構理解があるほうだと思うんですね。僕ひとりでも演奏してますけど、3人だとアンサンブル的なことができますし、逆に3人で全く同じことをしても、1人の時とは違った面白さがあると思っています。難しいことではなくて、普通の人が「ちょっとやってみようかなぁ」というところを狙いたいです。「あーあの人たち達人だな~」っていうのは、聞く人にとって雲の上の存在のように思えてくるでしょう?そうじゃなくて、使っている楽器からしても、距離的に近いところにいたいんですね。あ、でも、こんなかっこをしてたら近くはないか。でも、やってることは近い感じで「音楽は誰でもできるよっ!」って、伝えるグループでありたいと思っています。
やはり「音楽は難しいもの」と、思っている人が多いんでしょうか?
多いかな?僕自身も音楽を学ぶことの苦労をちょっとは知っているので...。でも、僕は音楽大学も行っていないし、たくさん練習をして上手に演奏できるようになって、それを人に見てもらって、間違えないで自分の思い入れ通りに演奏できるのを目標にするのではなく、まったく何もないものの中から自由に音を生み出して、それを「いい音だと思わない?ちょっと聞いてみて!」という感覚だけで発表するほうが気が楽かなと。もちろん、自分の遊んでいることに興味を持ってくれたらの話ですけど。音楽を楽しむには、まず、楽器を買わないと...とか、譜面で音楽を勉強しないと楽器に触っちゃいけない...というような概念がありますけど、そんな大人の解釈だけでせっかく盛り上がった気持ちを下げてしまうのは、すごくもったいないでしょう。「楽しみたい」って思っているのだったら思い切ってやったほうが良いと思いますよ。

三浦はつみ先生を宇宙に連れていこうかなと...

横浜みなとみらいホールは、どんな印象がありますか?
海の匂いがするし、クラシック音楽のためのホールなので、音が響く。僕個人としは、マイクがなくてもボワーッと響くホールが好きで、そういうところで自分の音が出せるのがすごくうれしいです。ホールの大きさも魅力です。そして、パイプオルガンの音がすごく素敵じゃないですか。ほんと素晴らしいですね。
8/6に開催される、はつみ先生 & Ticoboの「パイプオルガンとガラクタがっきコンサート!」は、どんなコンサートになりそうですか?
三浦はつみ先生を宇宙に連れ去ろうかなと。いや、地球人とティコボ星のトゲトゲ星人のコラボレーションですから何が起こるのかわかりませんね。三浦はつみ先生は「パイプオルガンは何の音も出せちゃう」って言っていますから、これは負けていられない!と思っています。はじめに、どんなふうに演奏するか決めておいて演奏するというのもいいんですけど、その時にゴワーって出た音を感じとって叩きたいなと思うんです。だから僕自身もどんなことになるのか全く予想がつきません。
予想不可能なコンサートですね。
そうですね。

2010年6月 山口ともさんのオフィスにて


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