
5月号 / 2010
:インタビュー「茂山逸平さん」
10.04.15

狂言師 茂山逸平 氏
Ippei SHIGEYAMA
プロフィール
二世茂山七五三の次男として生まれ、 父および祖父四世茂山千作、曽祖父三世茂山千作に師事。4歳の時『業平餅』の童にて初舞台。1994年に『千歳』、2001年に『三番三』、2003年に『釣狐』をそれぞれ披く。1994年に、兄宗彦、従兄弟の茂と「花形狂言少年隊」を結成し、また2000年より心・技・体、教育的古典狂言推進準備研修錬磨の会=「TOPPA!」を茂山家の若手メンバーと共に主催し、活動。その一方で、東映映画「将軍家光の乱心・激突」や、NHK朝の連続テレビ小説「京ふたり」「オードリー」他、舞台・CMに数々出演。また宗彦と共に、新作二人芝居に挑戦するなど幅広く活躍する。
2006年より企画製作にいたるまで自分たちで行う「HANAGATA」を再開する。2006年秋から1年間フランスに留学。
オフィシャルブログ「和日日和」
「お豆腐狂言 茂山千五郎家」
イベント
7/11(日)
横浜能楽堂普及公演「横浜狂言堂」
狂言「栗焼」(大蔵流)茂山千三郎
狂言「鎌腹」(大蔵流)茂山逸平
お話 茂山逸平
<会場>横浜能楽堂
【チケット】
電話・WEB:2010年6月12日正午から
窓口:2010年6月13日正午から
<お問い合わせ>
横浜能楽堂
初舞台は4歳
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初舞台は、4歳のときだったとお聞きしました。その時のことは覚えていらっしゃいますか?
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ぜんぜん覚えてないんです。人伝えで「こんな感じだった」と聞いて、そうだったんだと思うだけで...。写真を見たんですが、とても嫌そうな顔をしてました(笑)。※1「業平餅(なりひらもち)」という演目だったんですが、※2髢(かもじ)を結うと頭がかゆくなるんですよ。髢を結う前の写真は楽しそうで、結った後は嫌そうな顔をしているんですよ。きっと、かゆかったんでしょうね。舞台にいるのは楽しかったみたいです。舞台からはけなきゃいけないところで、そのまま舞台にとどまっていたことがあったみたいなので。
◆※1「業平餅(なりひらもち)」
在原業平が玉津島明神への参詣途中で空腹になり、茶屋で餅をもらいます。しかし、お金を持っておらず、餅代の代わりにと茶屋の娘のしつけを依頼されます。業平は喜んで娘を預かりましたが、これが醜女であったため、傘持に娘を預けて逃げ出します。何も知らない傘持は業平から妻を頂いたとあって喜びますが、娘の顔に驚いて逃げ出すという話。
◆※2 髢(かもじ)
髪を結うときに、地毛の足りない部分を補うための添え髪・義髪のこと。
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これまで色々な役を演じてこられた中で、好きな役、嫌いな役というのはありますか?
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好きな役は※3「禰宜山伏」(ねぎやまぶし)の禰宜さんが好きなんですけどね。嫌いな役というよりも、身に合わない役というのはやりにくいですし、ビジュアル的にでかいので、甲斐甲斐しい奥さんとかはちょっとみにくいですよね。
◆※3 「禰宜山伏」(ねぎやまぶし)
いさかいを始めた禰宜と山伏に、茶屋の亭主が「大黒天を祈って効の現れた方を勝ちにしてはどうか」と提案する。二人が祈り出すと、大黒天は禰宜の方に味方するという話。
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観客の反応によって演技が変わるということはあるのでしょうか?
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もちろんあります。反応があるお芝居なので、言い方が悪いんですけど、お客さんの反応によって「お笑い待ち」ということもありますし。狂言って、おおちゃくなお芝居なんです。なので、演者によってもお客さんの反応によっても違いますし、日によっても違えば、昼夜などの時間によっても違いがありますね。昔は、関西と関東で違いがあったらしいですよ。おじさん(茂山家当主の茂山千五郎氏)がやり方を変えていたとか、いろいろ聞きますけどね。そう考えると最近は、そんなに変えなくてもいいのかなという気がしますね。年令層によって、子ども用と大人用に変えたり、マニア用に変えたりするというのは必要ですけど。
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狂言の世界で「アドリブ」はあるのでしょうか?
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もちろん。私は、アドリブも投げていいものだと思っています。そんなに決まりきったことをするものではないので、どこまでがアドリブなのかっていうのは僕もよくわからないんです。例えば「こころえました」っていうのと「かしこまってござる」っていうのは、いつ、どちらを言ってもいいんです。別に決まっていないんです。アドリブなのか、それとも、全然関係なく言えるものなのかっていうのがわからないんですけど、即興的な演技っていうのは、さっきのお客さんの反応によって...というところもそうですけど、役者のスキルとして瞬発力は必要ですよね。ですので、狂言の中にもアドリブというのはあるものだと思います、ライヴでやっている以上は...。
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現代の笑いのように、アドリブがアドリブを呼んで...というようなアドリブとは違うものなのでしょうか?
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新作狂言とかで、時事ネタを入れてくるっていうのもありだと思いますし。アドリブとして考えると...うーん...まず、コントとは作り方が違いますので。もちろん、狂言っていうのも寸劇というか、コント的な要素を持ったものではあるんですけど、基本的には固定されたものでしかないので、若干違うと思いますね。
しばるための綱を忘れたり... ~本番でのハプニング~
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公演前や、公演中にハプニングというのはありますか?
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ちょこちょこありますね。
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忘れ物をされたという話をお聞きしましたが・・・
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うちのおじいさんは、※4兜巾(ときん)を忘れて、茶筒でやったっていう話がありますね。でも、別に違和感はないんですね。見本があって本物かどうか見比べるわけではないので。兜巾も道具用の兜巾から本物の兜巾から、今でも山伏さんが高野山に行くと、プラスチックのがあったり、うるしのがあったり、ナイロン製のがあったりするので。それとは別に、この前にやってしまったのは、日を間違って...ダブルブッキングじゃないんですけど、うちの奥さんが美容院に行くっていうので「いいよ、子どもみてるよ」って言ったのに、あとになって、福井で仕事がある日だと気が付いて...どうしようって。そっちのほうが怖いです。(笑)もちろん、セリフがとんだり、かんだりもあります。でも、そういう場合は自分のミスには見えないんですね。相手のミスに見えるんです。忘れたほうは、「間違えた!」って自覚はあるんですけど、間違えられたほうは「え?」ってなるんですね。そうすると、お客さんは間違えたのは本人ではなく、その相手だと思うんですね。間違えたほうは「何とかしてくれって」(笑)
◆※4 兜巾(ときん)
修験道の山伏が額につける小さな円筒形のずきんのこと。
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それはいいですね~(笑)相手の方は困ってしまいますね。その他には?
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それから※5「棒しばり」で縛るための綱を忘れたり・・・
◆※5 棒しばり
自分の留守中に、下人が酒を盗み飲みしないようにするために策を考え、二人の下人を騙してしばり上げてしまうが、下人の方も酒が飲みたいがために知恵をしぼり、しばられたままの不自由な姿勢で酒を盗み飲むという知恵くらべの話。
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え?しばり上げるときは何でしばったんですか?
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腰紐でしばって(笑)そういうときって、いい発想が浮かぶんですね。どうしようと思って、取りに帰るわけにもいかないし...で、相手に「腰紐でしばるね」って言うわけにもいかずに、乱暴するようにはがいじめにして(笑)俺は男に何をしているんだろう!?って。それから、衣装を持っていかなかったとか。
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衣装をですか!?どう対処されたんですか?
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ひいおじいさん(故三世茂山千作氏)が衣装の管理をしていた頃なので、何十年も前の話ですね。学校狂言に行くのに、衣装の鞄に、行き先の札を張り間違えて紋付しか持って行かなかったという。しかも、4人で行くのに2つくらいしか入ってなくて、襦袢と紋付と。主催者から「もう少し出します(公演料を)ので、来年はもっときれいな衣装を...」って言われたという話があるんです。
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どうにかなったんですね。いや、どうにかするしかないんですね。
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どうにかするしかないんです(笑)。昔のほうが多かったですね。ハプニングというか、忘れ物というか。「兜巾(ときん)を忘れた!」って、本番前にあわてて作ってどうにかしたのに、本番で箱の蓋を開ける場面で、箱の蓋を開けたら「あった!」って(笑)。扇子がつぶれたりするのはよくありますね。言っちゃいけない台詞を先に言ってしまうという人もいますしね。
何かしら持って帰りたい
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ドラマや舞台でも活躍されていますが、違うジャンルに出演されることによって、新しい発見はありますか?
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狂言は、家族で衣装や小道具を準備して、チラシをつくり、チケッティングをして...というように、全部自分たちでするんですが、狂言以外のジャンルに出て行くことによって、色んなプロフェッショナルな方がいることを知ることができますね。そして、狂言師とはまた違った責任感が増しますね。あれもしなあかん、これもしなあかんって思っている中でするのではなく、自分の役だけを絶対に責任を持ってやり終えなければならない、という責任感ですね。ドラマで与えられた役は、Wキャストでもない限り僕しかいない。でも狂言は、1日公演でほぼ終わってしまうものですし、今日して明日もするとは限らない。次の日になったら、同じ狂言でも、※6附子(ぶす)も兄貴(茂山宗彦氏。NHK連続ドラマ小説「ちりとてちん」などにも出演)とするときもあれば、茂ちゃん(茂山茂氏))とするときもあれば...というのがあるんですね。ドラマや舞台で役をすることで、自分にしかできないという責任感と誇りと、いい意味で恐れを持ちますよね。色んな意味でひとつの道具にしてもそうですし、色んな怖さが本当はあるものなんだっていう再確認ができるかなと思うんですよ。
◆※6 附子(ぶす)
用事に出かける主人が、太郎冠者と次郎冠者に留守番を言いつけます。主人は砂糖の入っている桶を指して「この中には附子という猛毒があるから注意せよ」と言って出かけます。二人は怖いもの見たさに、その桶のふたを開けてしまいます。二人は、中に入っているものが砂糖だと気がつき、砂糖をすべて食べてしまいました。言いつけを破ってしまった言い訳にと、主人の大切な掛軸を破り、台天目を打ち割ります。やがて主人が帰宅すると二人揃って泣き出し、こう言い訳します「留守中に居眠りをせぬように相撲をとっていたら、大切な品々を壊してしまいました。死んでお詫びをしようと猛毒の附子を食べたがまだ死ねない」。主人は怒り、逃げる二人を追いかけるという話。
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ドラマなどに出演されることは、ご自身にどのような変化をもたらすのでしょうか?
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ちょっとぐらい自分が何かを得て、プラスになって狂言の世界に戻りたいというのがあって、それは舞台の上のことでもそうですし、生活面でもそうですし、何かしら持って帰りたいと思っていますね。今、こういうことは世間では当たり前にある...ということを肌で感じることができる、違いを知ることができるという意味で、とてもいい影響を受けていると思います。狂言は、大幅な変更を加えていけるお芝居でもないので、良い部分はそのままで、ちょっとずつちょっとずつ、変えられるところから変えていけたらと思っているんです。制作関係でもそうですし、常に何かおみやげを持って帰りたいなと思っています。
狂言は、気楽で自由、想像して楽しめるお芝居
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7月の横浜公演の見どころを教えてください。
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※7「鎌腹」は2回目ですね。ひとり芝居なので、見どころっていえばそこなんです。うちのおじさん(十三世千五郎氏)が得意でよくやっているので、今までは『鎌腹といえば千五郎』となっていたと思うので、ご存知の方もニューバージョンの鎌腹を見てください!という感じです。人によって演じ方も違うと思うので...。
◆※7 「鎌腹」
山へ薪を取りに行かない怠け者の夫に、妻は怒って鎌を持って追い回します。そこに仲裁が入り、夫は「女に侮辱されるよりは死んだほうがましだ」と、鎌で腹を切ろうとします。しかし、意気地のない夫は結局死にきれず、山に薪を取りに行くことにします。一方妻は、夫のうわさを聞きつけ自殺を止めようとやってきますが・・・。
シテが独演的な要素が強い曲。
※ 画像は2008年7月13日横浜能楽堂普及公演「横浜狂言堂」での「鎌腹」上演の様子(撮影:神田佳明)

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初めて狂言を見る方に向けて、何かアドバイスをお願いします。
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狂言に限らずなんですけど、お芝居自体をそんなに難しく考えないで欲しいと思っています。乱暴な言い方をすると、お芝居って全部『なになにごっこ』なんですね。子どもの頃に遊んだ『チャンバラごっこ』や『おままごと』と同じで、役者はその時代のその話を『ごっこ』で表現するわけです。狂言を見たことがない方は「ええおっさんが、ごっこしてはるのを見に行こう!」「ごっこライヴを見に行こう」という感覚で、気軽に見に来ていただければと思っています。狂言は舞台セットが少ないので、舞台演出が整っているお芝居と比べると物語の背景や状況がすぐにはわかりにくく、「あとはお客様が好きに考えてください!」というところもあるので、初めて見た方には不親切なものに映るかも知れません。でもそれは、見方を強いるのではなくて、お客様の自由なんです。そういう意味では、気楽で自由、想像して楽しめるお芝居という見方もできると思います。
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狂言を楽しむコツというのはありますか?
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狂言を楽しむためのコツ...それは、まず笑ってみることです(笑)。笑いの分野すべて、コントや喜劇もそうです。たとえ面白くなくても、とりあえず面白いと思ってみる。役者に騙された気になって独特の間を楽しむ。そうすると、狂言の世界がどんどん楽しいものになりますよ。
好きなことと仕事が近いっていうのは、幸せなのかなって
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一番の気分転換は何ですか?
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友達と酒を飲んでいるときですね。友達とワイワイやっているとリセットできます。年齢も違うし、色々な職業に就いている、微妙に違う人たちが集まるので楽しいんです。それから、競馬新聞を読んでいるとき。馬券は買わずに、実況中継を考えるんですよ。(笑)違うドラマを創作してみるとか。
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馬券を買わずに、実況中継をですか!?
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携帯のスポーツサイトを見たりしながら、素晴らしい実況ができましてね(笑)。お弟子さんとか童司くん(茂山童司氏)とかには「こんな実況なんやけど、馬券買わへん?」って。で、去年買いましてはずれました(笑)
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年齢を重ねられることで、ご自身の目標も変わってこられたのでは...と思うのですが、いかがでしょうか?
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もともと目標や夢をもたないタイプなので「夢は何ですか?」と言われると困るんです。もちろん、じいさん(四世 茂山千作氏(人間国宝))であったり、親父(茂山七五三氏)であったりというのは、今まで目標としてそのものまねをしてきたわけなので、気が付けば親父とは似てないこともないかと思います。声質も似てるので。だからといって、おやじが目標というわけでもないんで。「自分が目指すものは、これです!」というのは特にはないですね。逆に言うと、こういう狂言がしたい...という目標があることによって、おしつけがましいことをしちゃいそうなんで。それは、お客さん向けの狂言ではないと思うんですね。だから自己満足というか、そういうふうにはしたくないんです。目標というわけではないんですが、もっと面白い人になりたいです。舞台の上でいいんで。ただ面白いだけではなくて、球体のような人、コロコロ変われる人にはなりたいですね。難しいんですけど。そういうのを意識したいなと...。
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狂言師になって良かったと思うときはどんなときですか?
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わりと歴史や、和のものや昔のものを好きな自分がいるんですね。考え事をしているときに、仕事のことを考えながら酒を飲んで楽しいと思えるこの感覚。自分が置かれている状況、これは非常にいいなと思いながら生活をしています。番組立てを考えたりとか、ちょっと新作狂言のことを考えているのもそうですし、歴史小説とかを読んでいるのもそうですし、何となく、自分の趣味と仕事と、好きなことと仕事っていうのが、シンクロすることがあるんですね。好きなことが仕事になっている、好きなことと仕事が近いっていうのは、幸せなのかなって、そういうふうに思うことはあります。
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茂山さんが舞台に立って、すごく気持ちが良かったと思えるときは、どのような狂言ができたときですか?
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缶コーヒーが好きでよく飲むんですけど、出番になって舞台の上に立っている間に残ったコーヒーは熱いものは冷め、冷たいものはぬるくなるじゃないですか、そうなるとわりとまずくなるんですね。でも、その缶コーヒーがすっごく美味しく思えたくらい気持ちのいい舞台ができた時期があったんです。頭の中は、その日の体調、その日の思いでまっすぐできる自分があって...。でも、残念ながら、今はそういうことはなくなっちゃたんです。
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それはなぜですか?
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歳とともになんですけど、舞台上の自分を俯瞰で見るようになってしまったんです。それが邪魔になるときもあれば、もちろん役に立つこともあるんです。若いときの感覚をもう一度!と、この間チャレンジしてみたんですけど、ダメでしたね。途中で、俯瞰で見ている自分に気が付きました。そこまではうまいこといっていたんですけど。
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それは、余裕でもあるし、色んな角度からモノを見ることができるようになったということなのでしょうか。
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もちろんいいことも多いですよ。音をとれるようにもなってきましたし。すごく気持ちが良かった!というようにすっきりした思い出はないですけど、ひとりでワインを飲みながら舞台でのことを思い出して、にたっとすることはあります。(笑)
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横浜に来られるときに、楽しみにされていることはありますか?
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横浜に来たら、確実にシューマイは買って帰ります。崎陽軒の丸いお皿、ちょっと上等なほうのシューマイがのる大きさで、電子レンジでチンする用のお皿が我が家にあるんですよ(笑)。日帰りが多いので、なかなか横浜に泊まることがなくて、色んなところへ行く時間がないんです。この間も日帰りでした。以前、※8 「30連発」っていうのがあって、1週間ぐらい横浜に滞在したことがあったんです。その時は、中華街に行き倒してましたね。みなとみらいの観覧車も乗りました。
◆※8「30連発」
平成13(2001)年3月、横浜アートLIVE2001特別企画『茂山狂言30連発』を開催。大蔵流茂山家一門総出演により、6日間連続で30曲を上演した。
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横浜の空気はいかがですか?
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実はそんなに知らないんです。新幹線で来るので新横浜の駅周辺と、桜木町駅の周辺をうろうろする程度なので...。前に1回、公演期間中に「山下公園行こうか!」って言ったら、却下されたんです。
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却下ですか...。残念ですね。
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中華街ってだけでイメージが沸かないんですね。そうそう、横浜は神戸と同じでやたらと坂がありますね。違うオペラの稽古に行ったときも、やはり、やたらと坂がありましたね。今度ゆっくり色々見て回りたいです。
(2010年2月 国立能楽堂にて)