情報誌 毎月22日発行

12月号 / 2009

:表紙の人  新海岳人さん

09.11.19


新海岳人さん「山と人」

アーティスト 新海岳人さん
Taketo SHINKAI

プロフィール

新海岳人(しんかい たけと):1982年愛知県生まれ。愛知県立芸術大学卒。アニメーションとしての動きは最小限に抑え、会話中心でストーリーが展開する「会話劇アニメーション」シリーズなど、シナリオライティングをベースにおいた映像制作活動を行う。第8回文化庁メディア芸術祭 アニメーション部門 奨励賞をはじめ受賞多数。「映像作家100人」にも選出されている。また文筆家としての側面もあり、ブログ「うそ日記」はアメーバブックスより書籍化。
新海岳人さんホームページ

新海岳人さん作品「もしもし」上映情報

ヨコハマ国際映像祭2009 セレクションプログラム
「現代日本のアニメーション集」山村浩二セレクション
日時:2009/11/23(月・祝)15時
場所:東京藝術大学大学院映像研究科馬車道校舎
詳細→>ヨコハマ国際映像祭2009

山村浩二の「私が推薦しました!」

昨今の若い作家が、動きやビジュアルの要素を重要視してつい忘れてしまいがちなことに、ストーリーとユーモア、シンプルさなどが挙げられる。アニメーションにおけるこれらの根本的な要素を飄々と体現しているのが新海作品だ。作品に流れるセリフの細かな心情のメタモルフォーゼが、あえて動かない絵に別の表情を与えていく。語りたいものを持ち、自分の語り方も心得ている。言葉を操れるアニメーション作家として希有の存在だ。
山村浩二さんWEBサイト:「YamamuraAnimation」

新海岳人さん<山と人>

《山と人》2007年.6分3秒.アニメーション


新海岳人さん<もしもし>

《もしもし》2007年、4分15秒、アニメーション


新海岳人さん<ステイタス>

《ステイタス》2008年、7分27秒、アニメーション


※ 「ヨコハマ・アートナビ」では、東京藝術大学大学院映像研究科の協力により、若手アニメーション作家をご紹介しています。毎月、登場する作家は、『頭山』や『カフカ田舎医者』で世界最高峰のアニメーション映画祭のグランプリを多数受賞した、山村浩二さんによるセレクション。2009年5月より、作家のインタビューとともに動画を配信しています。(~2010年4月)

ついつい笑わされてしまう、とてもユーモラスな作品を作る新海さん。テレビ放映される作品なども手がけ、幅広く活躍する新海さんにお話をうかがいました。

情報誌「ヨコハマ・アートナビ」平成21年12月号表紙掲載作品
新海岳人《山と人》2007年.6分3秒.アニメーション

ドラゴンクエストのストーリーを考えて登下校していたんです。

作品で見せたいと思っていらっしゃるのは「会話」のほうですか?
子どものときから、お話をつくることは好きでした。空想癖があるんです。僕が小学校の頃、ファミコンでドラゴンクエストが流行っていて、友達はみんなそれで遊んでいたんですけど、僕の家はゲームを買ってもらえなかったんです。ソフト持ってないのに攻略本だけ買って、自分でドラゴンクエストのストーリーを考えて登下校していました。多分、その頃からお話をつくることが好きになったんだと思います。
作ったお話は、自分の中で作るだけでした?友達に披露したりは?
自分の頭の中だけですね。登下校中も、授業中も、寝る時も、頭の中でずっとお話づくりをしていたんです。スポーツものだったり、その時々で好きなマンガやゲームのスピンオフみたいなのだったり。だけど、みんなそんなことをしてないってだんだん分かってきて、恥ずかしくなって高校くらいでやめたんです。それからは空想癖も落ち着いてたんですが、芸大生になって自分の人生を振り返った時に、ああ子供のころからお話を作るのが好きだったな、って思い出して。
キャラクターがあまり動いていませんが、もっと動かしておもしろくしようとか考えますか?
本当は動いたほうがいいですよね。動かさないのは、作業が単に大変だから。でも、動いていないからしゃべるしかないな、という感じです。特別会話ものが好きと言うより、お話だったら何でもよいので、動かせる技術と忍耐があれば会話劇じゃないものもやりたいですけどね。

モノをつくるのが好きなんです。

会話劇だけでやろうとは思わなかったんですか?なぜアニメーションをプラスしようと?
何でしょうね。あんまり理由はないと思うんです。僕はもともと漫画家になろうと思ってたんで...と言っても、漫画をそんなたくさん描いてたわけではなく、ただ思ってただけですけど。大学の4年のときに、ブログで日記をつけていてそれが本になって、それはそれで楽しかったし、文章もいいかなぁって思ったんです。でもやっぱり、芸大の学生だし、形に残る作品を作りたいなあとも思ったり。でもどうしてアニメーションを?と言われるとよく分かりませんね。その時にかっこいいと思ったからとかですかね。
かっこいいな、と思ったのはなぜでしょう?
僕はあんまりアニメを見るのは好きではなくて、スタジオジブリとか、まあ普通の人が見るくらいのレベルなんですが、芸大に入学して、ひとつ上の先輩がやっていたアートアニメを見て、かっこいいなあと思いました。
だけど、文章でもいいなとも思っていたんですよね。
文章でもいいなと思っていたし、アニメーションもいいなとか、そもそも最初はあまり何も考えてなくて、フツーの怠惰な大学生でしたから。
でも、アニメーションを作ってみて、「いいな」って自分にはまってきたところがあるからアニメーションの作品が出てきたんですよね。
そうですね。僕は怠け者ですが、モノをつくるのは好きなんです。 自分で作ったものが形になって残るっていうのはすごくいいですよね。
例えば、芸人さんに会話劇を実演してもらうという方法もあると思うんですが、アニメーションだからこそ表現できること、実現できることがあるのでしょうか?
例えば、本を書くんだったら本を書くやり方があると思うし、実写だったら実写の描き方があると思うし、動くアニメーションだったら、動くアニメーションのお話があると思うんです。あれは、自分が「動かないアニメーションだったらこういうのがいいんじゃないの?」と思っているものなんです。だからあれを芸人さんがやってもおもしろくないと思うんですよ。何も動かないアニメーションだからあんなふうにしたっていう。あとは、やっぱりグラフィックデザインですよね。一応デザイン科だったんで。グラフィックがあって、それにお話もつけれるっていうのはアニメの嬉しいとこですよね。

ボケの人ってすごいなぁ

山と人のテーマをああいうふうに決めたのは、何かこだわって?
「いい話」が好きなんです。でもまじめな話だけだと恥ずかしいんでギャグとかいれちゃって。照れですね。あと自分の名前が岳人なんですが、父親が山が好きだったんです。子供の頃から登山に付き合わされて、それで山が嫌いになって。で、そんな山ともう一回向き合ってみようと思ったのもきっかけです。 全然関係ないですけど、この作品(山と人)は、見た人に「山と川」って言われるんです。キャラクターが川っぽいじゃないですか。それは全く気付かなくて、完成して「川みたいだね〜青いし髪もうねってるし」といわれて、本当だ!って。
新海さんが思う「いい話」の「いい」とはどんなことですか?
よくできている作品。ウェルメイドと言うか。作品を見た人が「やられたわ~」「賢いな~」と思うような。そういうのが好みですね。
人を笑わすのは好きでしたか?
普通くらいに好きでした。でも、やっぱりクラスで一番面白い奴って、ボケじゃないですか。僕はツッコミのほうなんですよ、恥ずかしいから。だから、子供の頃からボケることができる人っていいなぁ、すごいなぁと思いながら、ボケの子にツッコミを入れてました。でも、それが変わったのが小学校の卒業文集でクラスのランキングをつくった時。文集のランキングの「面白い人」で僕が1位だったんですよ。それまでは、ボケてる人が面白くて、僕は自分のことを面白いだなんて思ったことは少しもなかったんです。でも、おもしろいことに、おもしろいと気付くことが、おもしろいことになるんだっていうことに気付いたんですね。
他に新海さんがランク入りしていたものは?
「給食をよく食べる人」の1位でしたね。「もてる人」は3位。「かっこいい人」ランキングには入ってなかったですね。給食を食べて面白いから「もてる人」では3位。なるほどねって、そうやってビジュアルの差を埋めていくんだなって子供ながらに気付いたわけです。

全体のストーリーを大事にする

作品の中での、笑わせる「間」や「笑い」についてのこだわりはありますか?
お笑いが好きなわけでなくて、お話が好きなんです。演劇もそうじゃないですか。お話がありつつ、笑いがあるというふうに。なので実は、笑いについてのこだわりは?といわれるほど、こだわってないんです。結局、ギャグもお話のひとつという気持ちなので、そうすると、一番笑えるツッコミとは違うチョイスが必要だったりするんです。ちょっと説明的なツッコミを入れて、あとでそれが伏線になったり。その場の笑いより、全体のストーリーを大事にするっていうのはありますね。ギャグを入れたほうがおもしろいけど、そのギャグはストーリーに関係ないから、いらないって。だから、お笑い系作家って書かれるのは、むちゃくちゃ恥ずかしいし、出来れば勘弁してほしいです。
一瞬の爆発的なお笑いを目指しているのではないということ?
偉そうですが、そんな感じです。だから「笑えない」と言われても、多少むかつきつつも、まあそうですよね、と。
アニメーションのキャラクターの声は役者さんにお願いをしてるんですか?間合いや話し方は役者さんにおまかせですか?
色々ですが、「山と人」は、演劇の主宰をしている先輩を通じて、役者さんにお願いしました。台詞の言い回しとか、結構細かくディレクションさせてもらっています。自分が最初にちょっと読んで、こんなテンポでお願いしますって。でも、僕が言った台詞よりも、いいのが返ってきたりします。
話のネタ探しとか、話をつくるきっかけはどういうところで?
僕の場合は考えようかなと思ったら考えますね。自然に街を歩いてたらいい風がふいて「ハッとひらめいたんです」みたいなのはほとんどないし、移動中はだいたい本を読んでますし。重い腰を上げて『今日は考えよっ!』ってノートを開いて、マクドナルドで...。この質問、よく聞かれるんですけど、特に変わったことはしてないです。すみません。
膨らんでいくネタと、全然膨らまないネタはあるんですか?
それはありますよね。やっぱり次の日に見ると面白くないんですよ。ちなみに一昨日もいいアイデアがひらめいて「今年はこれだ!」って思ったんですけど、今日になってみるみるテンションが下がってきています。僕は、割と客観視が得意だと思うんですよ。さっきも言ったようにツッコミの人なので。
自分で「つまらない」って思うのはどういうところで?
何でしょうね。何だろうな。男の友達が見て面白いと思うか?っていうのは考えますけどね。あとはこれって何かに似ているから恥ずかしいとか、こんな場面でこういうふうに返すのは恥ずかしいとか。結構、恥ずかしいものなのかどうかで決めてるのかも知れません。自分が本当に思ってないことをやるのは恥ずかしいじゃないですか。本当は政治とかに興味がないのに、政治ネタをやったりするのは恥ずかしい。うまい例えができませんが、自分が思ってもいないことを、面白いからってキャラクターにやらせたら恥ずかしいですよね。やっぱり自分のメッセージやアイデアを入れたものが「作品」だと思うので、自分にウソをつくのはよくない。
ご自身の作品はどのような位置づけだと思いますか?
出来れば、出来ればですけど、自分としては、アート・アニメーションに入れて欲しい。「作品」として見て欲しいんです。お笑いを追求とか、泣かせを追及とかでなく、エンターテイメントでもない「僕はこういうことを思っています」というのを作っているんで。消費されるものとして見て欲しくない。笑いたいだけなら他にいっぱいありますから。

(2009年9月 大門のレストランにて)


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