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アメリカの劇作家、ソーントン・ワイルダーによって作られた「わが町」。世界中の数多くの町でそれぞれのバージョンが作られるほど人気のある作品だ。杉田で行われる公演も、この「わが町」がモチーフになっている。
「“わが町”は、日々の営みのなかに人間にとって普遍的な“生きる”というテーマを織り込んだ名作です。杉田はとても歴史がある町なので、この舞台を通じて杉田の文化的なものや歴史的なものを共有できればいいと思っています。」
今回の公演にはオーディションで選ばれた磯子区民が出演する。16歳から70歳超まで老若男女で構成される劇団の様子は、まるで一つの地域コミュニティのようだという。
「今は地域社会がゆるやかに壊れている時代ですよね。20世紀に我々が、“速さ・便利さ・モノの豊かさ”を求めた結果、出てきた負の遺産です。その失われた地域社会が演劇の中には存在している。そこで人は同じ物を作る過程を共有し、無くしつつあるコミュニケーションを取り戻していくんです。」
演劇は私たちが生来持つ“人と繋がりたい”という気持ちをゆっくりと蘇生させる。閉じている心を開かせる効果を持つ。その意味を込め、西川さんは演劇を“漢方薬”と表現する。この“漢方薬”はやがて、壊れてしまった地域社会へも効能を及ぼしていく。劇団文学座に所属するかたわら、一般の人たちが演劇に触れるワークショップなど積極的に地域と関わってきた西川さんの思いはここにあるようだ。
「僕らはプロだから、もちろんクォリティの高い作品を作り続けるという使命はあります。しかし、その一方で社会に貢献しなければいけない、地域で演劇人が何かやらなければという思いはずっと自分の中にありました。その場にいる人が同じエネルギーと演劇の知を使って、地域で一緒になっていろんなことをやりたいです。それで自分もエネルギーをもらって、楽しんでいますから。」
あくまで地域での演劇にこだわりを持つ西川さん。最後に、この公演に向けてメッセージを頂いた。
「演劇の特性は観客が入ってはじめて成立するというもの、やっぱり観客がいないと演劇という表現行為は成立しないんですよ。そして観客が“いい芝居に触れた”と言うとき、本当にその空気に触れてるんですよね。だから、僕や僕と一緒にやる人達がいろいろ試行錯誤しながらどこかで楽しみ、どこかで苦しんで…という時間が結果としてお客さんに伝わるんじゃないかなと思ってます。」
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●西川信廣(にしかわのぶひろ)
1949年東京生まれ
金沢区在住
劇団文学座演出部所属
86年から一年間、文化庁在外研修員として渡英。ブリストル・オールドビック、ロイヤル・ナショナル・シアターで、ロジャー・リース、ピーター・ホールなどの演出助手を務める。紀伊國屋演劇賞個人賞、芸術選奨文部大臣新人賞、讀賣演劇大賞・優秀演出家賞など受賞多数。各種プロデュース公演から商業劇場公演まで幅広い作品の演出を手がける一方で、地域演劇の活性化にも力を入れている。新国立劇場演劇研修所・副所長。東京藝術大学・演奏芸術センター客員教授。
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