ヨーロッパでは近年、アートが地域社会の成長と発展を促すうえで、たいへん重要な役割を担っています。巨大な産業遺構をアートスペースに転用したり、新しい芸術都心を創出したりすることで、衰退した工業・港湾都市を再生するような取り組みが各地で行われています。その成功は周辺産業としての観光や商業分野における雇用創出などに直結し、地域・都市、そしてそこに暮らす人々の生活環境をも活性化する大きな成果をあげています。
「EU・日本創造都市交流2005‐Arts for Community Growth and Development‐」は、そうしたアートによる地域活性化の現場を訪問し、EUと日本のアートNPOの相互交流を図るため、「2005年日・EU市民交流年」事業の一環として企画されました。本年6月には国内のアートNPO及び地方公共団体等から18名が参加し、3グループに分かれ、EU6カ国(第1グループ:イタリア・アイルランド、第2グループ:英国・フランス、第3グループ:フィンランド・ドイツ)の視察を行い、大きな収穫を得ることができました。
このシンポジウムは、その成果に基づいて、視察先の代表的なプロジェクトの関係者を招聘し、EU各国の創造都市戦略の実態を学ぶとともに、アートが都市経営のソフトウェアとして機能し、地域や市民に活力を与えるための課題や今後の方向性などについて、幅広くディスカッションを行います。
また、今回シンポジウム開催に先立って、「EU各国との交流」「アートNPO相互のネットワークづくり」「アートNPOと自治体の連携」などをさらに促進するため、視察国からアーティストを招き、国内各都市でワークショップを開催する予定で、その成果も、シンポジウム会場に展示されます。
NPOと行政や民間企業、市民やアーティストが一体となり、アートによって都市社会の新しい地平を切り拓いていく、そんな可能性を参加者の皆さんと一緒に考えたいと思います。 |